こんにちは。
横浜市で税理士をしている松原です。
昨今、個人の働き方が多様化し、会社運営の簡便化や利便化が図られたことによって、独立して会社を設立するハードルが低くなり、起業を選択する人も増えてきました。
一言に起業するといっても個人事業主として事業を運営する方法と会社を設立して会社運営を行っていく方法など様々です。特に会社を設立するとなると「会社設立に何の書類を準備すればいいかわからない」「手続きや届け出を行うのが難しそう」と感じる方が多く、具体的に何から初めるべきなのか、設立の手続きはどんな流れなのかイメージはつきにくいのではないでしょうか。
今回は、
会社設立ってなにからやればいいの?
という方に向けて会社を設立する流れやメリット、必要書類について詳しくご紹介していきます。
横浜で会社設立を検討している方はぜひ参考にしてください。
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Contents
株式会社設立の流れ:7ステップ
会社設立の基本的な手順を詳しく見ていきましょう。会社設立は準備するべきことが多く、準備期間が多岐にわたるため、漏れなく手続きを進めていく必要があります。
大まかな流れは以下の通りです。
②会社用の印鑑(実印)を作成する
③定款の作成
④定款の認証を受ける
⑤資本金の払い込み
⑥会社代表者による設立登記申請
⑦登記完了
会社設立の事前準備から必要作業、設立後の手続きの仕方まで、ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。
①会社概要の決定
これから会社を設立する上で、どのような事業を行うのか、どのような会社を作っていきたいのかなどのさまざまなことを決定していく必要があります。
決定するべき項目と詳細については以下の通りです。
・会社名(商号)
・事業目的
・本店所在地
・資本金額
・会社の設立日
・株価
・会計年度(事業年度)
・役員や株主の構成
・会社形態
会社形態は「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4種類があります。そのなかでも株式会社は国内で最も設立数が多く、社会的な認知度や信用度が高い会社形態になります。そのほかにもメリットはありますが、ランニングコストがほかの会社形態よりも高いことがデメリットとして挙げられます。
会社形態を決定する際には、それぞれの会社形態のメリット・デメリットを理解して、自分が考えている事業にあった形態を選択しましょう。
・会社名(商号)
会社を経営していくうえで会社の看板となるのが、「会社名(商号)」です。
会社のイメージであったり、事業内容を連想させるような会社名または事業の理念を込めたものなど、決め方はさまざまあります。これから長い間利用するものとなるため、熟考して広く親しまれるような会社名をつけられるように準備を行います。
しかし、ほかの会社と会社名がかぶってしまうと、不正競争防止法によっては損害賠償を負うことがあるため、事前に同じ会社名が登録されていないかを確認してから会社名を決定しましょう。
確認する際は、法務省のwebサービスで検索をするか、本店所在地を管轄の法務局で専用端末から調べることが可能なので、会社名を決めるときに活用してください。
・事業目的
事業目的は、設立する会社がどのような事業を手掛けるかを記載する項目です。事業目的は定款にも記載すべき事項になっており、記載していない事業に関しては原則行うことができません。そのため、将来行う可能性のある事業も記載しておくと将来の変更手続きの手間とコストを省くことができます。ただし、あまりに多くの事業目的を記載すると分かりづらくなり、事業目的に一貫性がないと取引先や金融機関から不自然に思われて社会的な信用度に影響を及ぼす可能性があるため注意が必要です。
・本店所在地
本店所在地は事業所の住所のことです。会社を識別するための情報となり、法律上の住所に当たるため、実際に事業を行っている住所と異なる住所でも問題ありません。
自宅を本店所在地として登録するケースがありますが、近年だとレンタルオフィスやバーチャルオフィスといった場所を登録することも可能です。ただし、事務所を移転するときには登記の変更手続きを行い、登録免許税を支払う必要があるため、長期的に利用することが可能なのかといった確認を事前に行いましょう。
また、同一住所に同一の会社名が登録されている場合は、登記を行うことができません。レンタルオフィスやバーチャルオフィスを利用する際は、同一住所に類似した会社名が登記されていないか注意が必要です。
・資本金額
資本金は会社法で下限が定められていないため、1円からでも可能です。しかし、資本金額は取引先だけでなく、金融機関や日本政策金融公庫など公的機関から確認されることが多いです。
そのため、金額が低すぎると社会的信用を得ることが難しくなり、取引や融資の申し込みに影響を及ぼす可能性があります。会社の初期費用や運転資金などを含めて3か月分の金額は最低でも用意しておくことをおすすめします。
・会社の設立日
会社の設立日は、法務局に登記申請を行った日です。直接法務局へ出向かずに郵送で手続きを行った場合は、登記申請書類が法務局へ到着して申請が受理された日が設立日となります。
そのため、特定の日付を設立日として選びたい場合は、登記申請書類を逆算して完成させるようにしましょう。なお、郵送の際に日付を指定したときや特定の日付に法務局へ出向いたとしても、法務局の業務時間外や書類に不備がある場合は指定した日付を設立日にすることはできないことがあるため、注意が必要です。
・株価
株式会社は、資本金と関連して株価について検討しておくことが大切です。資本金と同様に株価についても下限や「この金額でなければならない」といった決まりはなく、会社を設立する発起人の場合は、1株以上は保有する必要があるので、覚えておきましょう。
しかし、株価を決めるときは、会社を設立したのちの株式発行について念頭に置く必要があります。なぜなら、会社を設立する際に設定した株価と設立後の株価の差額が大きくなると、どちらか一方の株主が不利益を被る恐れがあるためです。
「株」で揉めるというのはよくある話ですので設立時からよく考え決定してください。
また、株価は社会情勢や行っている事業の相場によっても左右されるため、会社設立時は1,000~10,000円で金額を設定したほうがよいでしょう。もし株価を決めるときに迷ったら我々、税理士などの専門家に相談することも検討してください。専門家は多くの会社設立に携わっているため、株価をいくらに設定するかについては今までの経験からどのくらいの金額が適切かを判断することが可能となります。
ただ、税理士などは金融に関する専門家ではないため、あくまで相談しながら決めるといった意識を持っておきましょう。
・会計年度(事業年度)
企業の一定期間の収支を整理して、決算書の作成をすることが法律で義務付けられていますが、この決算書を作成するために区切る年度のことを会計年度といいます。会計年度は1年を越えなければ、いつ決算を作成するか自由に決めることができるため、多くの企業が4月1日から3月31日を会計年度としています。
決算月には、これまでの企業の収支や請求書、領収書などさまざまな書類の整理が必要となり、行うべき業務が増加してしまうため、決算月は企業の繁忙期を避けたタイミングで行うことが一般的です。
・役員や株主の構成
会社を設立するにあたって、役員や株主の構成を考える必要があります。
役員の場合は、実際に会社の運営を担う方が該当するため、代表取締役や取締役、監査役が役員として挙げられます。株式会社は、原則として1人以上を役員に決めなければならないため、1人で会社設立を行う予定だとその人自身が取締役を担うしかありません。
取締役会を設置する場合や資本金額が5億円以上または負債額200億円以上の場合は、監査役の設置が必須になります。
株主の構成は、誰がどのくらい株式を所持しているのかということです。株式会社において、株主の構成は資金調達などの面で非常に重要な役割を担っています。
株主とは会社に出資を行い、その会社の株を得ることを指しているため、発起人が株主になることも可能です。会社を設立する際に、株主名簿の提出が必要になるため、忘れずに作成をしましょう。
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②印鑑などの作成
一般的には会社設立時に必要な「実印」と取引口座開設のための「銀行印」、会社運営上必要となる「角印(社印)」が必要となります。印鑑を複数種類作成する理由は、リスク分散をするためです。会社設立時または設立後には多くの書類に印鑑を押印することがあり、1種類の印鑑を使用していると、紛失や盗難があった場合に悪用される恐れがあります。そのため、使用する場面によって使用する印鑑を変えることで紛失や盗難にあった際のリスクを抑えることができます。
ただし、2021年の改正法によって、オンラインで会社設立を行う場合の印鑑登録は任意となっています。法律の変化によって印鑑の必要性も変化しつつありますが、会社設立後に実印を使ったり、取引の際に印鑑を使用する場面は多くあるため、設立時に作成しておくと二度手間にならないので、会社設立の際に作成しておくのがおすすめです。
③定款の作成
定款には、会社の商号、事業の目的、資本金など会社の基本となる事項やルールが記載され、会社の憲法とも呼ばれています。定款には必ず記載しなければならない絶対的記載事項があり、記載しなければ定款自体が無効になるため、注意しましょう。
絶対的記載事項は以下の5つです。
・本店所在地
・事業の目的
・資本金額
・発起人の名前と住所
定款を作成する際の用紙と様式は特に規定はありませんが、会社設立申請書類はA4でそろえることが慣例となっているため、定款もA4サイズで揃えるのがいいでしょう。もしくはB4の用紙で作成し、2つ折りにして見開きのようにしてもかまいません。
定款は、設立登記申請用、公証役場保存用、会社保管用の3通分を作成して、そのうち1通に収入印紙4万円を貼付します。また2004年3月より電子定款も可能となり、これを利用するとこの4万円の収入印紙は不要となるため、近年では電子定款で作成するケースが増加傾向になります。
ただし、電子定款の場合は電子署名のために専用のソフトや機器が必要になるため、購入する際に初期費用として予算に組み込んでおきましょう。
④定款の認証
作成した定款に署名または記名押印した上で、公証役場で公証人の認証を受けます。公証人とは法務大臣に任命された法律事務の専門家です。
定款の認証は、作成した定款に法令上の問題がなく、定款に間違いがないことを証明するために公証人から認証を受けることを指します。この際に持参するものは、発起人全員分の印鑑証明書、実印、作成した定款3通です。もし発起人の代表者が役場に行けない場合は委任状が必要になり、代理人が手続きを行う場合は身分証明書となります。
定款の認証は北海道を除いて、本店所在地を置く都府県の公証役場であれば、どこでも定款の認証を行うことができます。
⑤資本金の払い込み
定款の認証手続きが完了すると、その定款に定めた資本金を出資者名義で口座に振り込みます。この時点では、会社設立が完了していないため、振込口座は発起人個人の銀行口座に振込を行います。
その後、払い込みが完了した通帳の写しを用意します。コピーが必要な個所は、表紙・支店名が記載されている箇所ページ・入金の確認ができるページです。ネットバンクの場合は、取引が確認できる画面や支店名がわかる画面をスクリーンショットを行い、印刷をして払い込みされたことを証明する「払込証明書」を作成します。
会社設立が完了したのちに、法人の銀行口座を開設し、個人の口座から法人の口座へ資本金を移行します。
⑥会社代表者による設立登記申請
会社設立の登記申請は、会社の所在地を管轄している法務局へ申請書類を提出して申請を行います。
申請に必要な書類は定款に記載した内容によって異なるため、手続きをスムーズに終えたい方は法務局の窓口に相談をするか、税理士や司法書士といった専門家に相談のうえ書類を用意しましょう。
設立登記の際に必要な書類の一例は以下の通りです。
・登録免許税分の収入印紙(資本金の0.7%の金額または150,000円のいずれか多い金額)
・定款
・発起人の同意書(発起人決定書、発起人会議事録)
・会社設立時の代表取締役の就任承諾書
・監査役の就任承諾書
・発起人の印鑑証明書
・資本金の払い込みを証明する書面
・印鑑届出書
・設立時取締役等の本人確認証明書(住民票記載事項証明書や運転免許証のコピー)
・委任状(代表者以外が手続きを行う場合)
原則、資本金の払い込みから2週間以内の申請が必要になるため、日付に余裕を持って申請を行いましょう。
申請書は法務局HPよりご確認ください。
⑦会社設立登記の手続き完了
書類に不備などがなければ、1週間~10日ほどで申請手続きが完了します。不備などがあった場合は、法務局から連絡がありますが、手続き完了の連絡などはありません。法務局において「登記事項証明書」、「印鑑カード」、「印鑑証明書」の交付を受けます。登記申請が完了した後は、登記事項証明書や印鑑証明書などを持参して、法人用の銀行口座の開設を行います。口座開設後、代表者の口座に振り込まれていた資本金を法人用口座へ移行を行い、会社設立が完了となります。
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会社設立後の手続き
会社の設立登記が完了した後は、税務署、労働基準監督署、地方公共団体、公共職業安定所、社会保険事務所への届出を行います。それぞれどのような書類や手続きが必要なのか解説していくので、登記の手続きが完了した後もスムーズに手続きが行えるように流れを理解しておきましょう。
税務署の手続き
会社設立が完了すると、会社で支払うべき税金が多くなるため、税務署での手続きが必要になります。この手続きを行わないと法律に違反する可能性があるため、優先的に手続きを行いましょう。
税務署への届け出に必要な書類は以下の通りです。
・青色申告の承認申請書
・給与支払事務所棟の開設届出書
・源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書
・棚卸資産の評価方法の届出書
・定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書
それぞれの書類を提出する期限があり、期限が1番近い書類は「給与支払事務所棟の開設届出書」です。この書類は、従業員を雇う場合に届け出が必要な書類となっており、会社設立後の1か月以内に書類を提出しなければなりません。そのほかの書類も会社設立から2、3か月以内が期限となっているため、早めに書類の作成に取り掛かる必要があります。
また、一般的には「法人設立届出書」「青色申告の承認申請書」「給与支払事務所棟の開設届出書」「源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書」の書類で手続きを行うことができますが、場合によってほかの書類が必要になることもあるので、不明な点は法務局の相談窓口へ事前に確認を行いましょう。
都道府県税事務所・市町村役場での手続き
税務署での手続きが完了したら、都道府県税事務所と市町村役場へ届出を行います。ここでは、法人住民税や法人事業税といった法人に課せられる税金について届出を行う必要があり、法人設立届出書などの書類が必要になります。
提出書類に関しては、自治体によって異なる場合があるため確認してから書類を準備したほうがいいでしょう。
年金事務所での手続き
年金事務所では、厚生年金や健康保険についての届出が必要です。
会社に在籍している従業員が社長1人の場合でも、社会保険に加入する必要があるため、「1人だから手続きしなくても大丈夫!」と思わずに、忘れず手続きを行いましょう。また、厚生年金や健康保険は生活に影響を及ぼす可能性があるため、従業員を雇う場合は手続き漏れがないように注意が必要です。
労働基準監督署での手続き
労働基準監督署では、労働保険の加入手続きを行います。従業員を雇用して保険関係が成立した翌日から10日以内に「保険関係成立届」を提出する必要があります。さらに、保険関係が成立した翌日から50日以内に「概算保険料申告書」の提出があります。
労働保険は、勤務中や通勤中に起きた事故などによって、負傷または死亡した場合に、労働者本人または遺族に対して給付を行う労災保険などが含まれています。予期せぬトラブルに見舞われた際に今後の生活に関する不安を取り除くため、労働者の保護や労働の安定を図ることが労働保険です。そのため、従業員の生活を維持するためにも、手続きを忘れずに行いましょう。
ただし、従業員がいない場合は加入する必要はありません。
ハローワークでの手続き
ハローワーク(公共職業安定所)では、雇用保険への加入手続きを行います。雇用保険の手続きは、保険関係が成立した日の翌日から10日以内に「雇用保険適用事業所設置届」を本店所在地を管轄しているハローワークへ提出します。
また、雇った従業員が被保険者となる場合は、被保険者となった日の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
雇用保険は、会社を退職するときや転職を行うといった場面で、一定期間のなかで働く予定がない場合、勤めていた会社の給与から計算されて、ハローワークから決まった日付に振り込みが行われます。以前の会社の給与から決まりに従って計算が行われるため、金額は断定できませんが、雇用保険も労働保険同様に被保険者の生活を守るための制度となっています。
そのため、従業員が入ってきたら迅速に手続きを行うように心がけましょう。
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