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資金繰りが厳しい理由とその対処法|当てはまる企業の特徴とは?

資金繰り

どんな事業を経営していても、資金問題についての悩みは尽きません。どの企業も社会に関わる事業を行っているため、社会の動向や流行によって売上が変動することも珍しくありません。

安定した経営を行うことは会社のブランドや信用力を保持するだけでなく、従業員や顧客の生活を守ることにもつながります。

昨今、インターネットが浸透して顧客の動向が変化したり、働き方の多様化も広まっていたり、社会の情勢が目まぐるしく変化していることで、資金繰りの重要性は以前よりも高まっています。

そのため、今回は資金繰りが厳しい理由や対処法、当てはまる企業の特徴について解説するので、これから会社を設立する予定の方や資金繰りの問題に直面している方は、是非参考にしてください。

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資金繰りが厳しい理由

資金繰りが厳しい理由は様々ありますが、「売上と損失の割合」「資金の管理体制」といったことが挙げられます。現在、資金繰りが厳しいと感じている方はどの要因に当てはまるのか考えてみてください。

収益より損失のほうが大きい

安定した会社を経営するには、損失よりも収益が大きくなければなりません。資金繰りが厳しいときは、損失が収益を上回っている可能性があります。

損失が大きい理由は、取引先の倒産などによる外部要因や経営の判断ミスなどによる内部要因などが挙げられます。収益は手元に入ってくるまでに時間がかかるケースが多いですが、支出や損失などで出ていくのはとても早いことも要因のひとつでしょう。

特に、創業時や新規事業の展開時期は始めてから収益に結び付くまでに時間を要するケースが多く、うまくいかなかった場合は損失が大きくなる恐れもあります。手持ちの資金がないと現状を打破することができないため、借り入れをする必要がありますが、手続きを行うことで時間が経過し、状況が悪化する可能性もあります。

管理体制が整備されていない

経営者や経理部門の担当者が資金繰りの重要性を理解していないと、資金管理の体制が整備できず、資金繰りが厳しくなります。社内の人件費や経費だけでなく、取引先の支払期日や未払金の督促、返金対応など外部に対しての対応も必要になるため、担当部署の体制が整備されていない場合、バランスを崩して経営難に陥る恐れがあります。

収益だけでなく、滞っている未払金や必要ではない経費などのマイナスな側面へのアプローチがとても重要です。例えば、経理を複数人で運営している場合は、社内・取引先・銀行などへアクションを起こす担当者を決めておくとやり取りが煩雑にならずスムーズです。

ただし、創業時や人数が少ない場合は管理体制を整えるまでに時間が必要です。人数や知識の面で不安を抱えている場合は、専門家に一部の業務を委託することもひとつの手として検討しておきましょう。

損益計算書を参考にする

損益計算書を参考にすると資金繰りが厳しくなる可能性があります。損益計算書は収益や費用、純利益などが記載されており、企業の収益性や経営状況を把握するための資料です。そのため、経営を圧迫している部分や資金繰りが厳しくなっている原因を探るために参考にすることができます。しかし、参考にする際に1つ注意しなければならない点があります。

それは、損益計算書に未回収の売上も含まれているという点です。何らかのトラブルによって回収できないと、入金の予定が崩れてしまい、資金繰りが成立しなくなる可能性があります。どんなに緻密な計画を立てていたとしても、「入金が期日までに間に合わない」「取引先が倒産してしまった」というトラブルは起きてしまいます。

未回収は必ず回収できるとは限らないため、損益計算書は売上原価や経常費用などの金額は適切なのかといった点で参考にする程度に留めましょう。

資金繰りが厳しい企業の特徴

資金繰りが厳しい状態が続いてしまうと、経営が傾いてしまう予兆ともいえます。厳しい状態を改善せずに放置してしまうと状態がさらに悪化してしまい、倒産する可能性もあります。

資金繰りが厳しい企業の特徴を4つ紹介します。

チェックアイコン売掛金の回収が遅れている

売掛金は商品やサービスの対価として、顧客からあとで代金を受け取れる権利です。売掛金は、都度支払うよりもまとめて支払うことで支払う手間や振込手数料などのコストを削減することが目的といわれています。

ただし、売掛金が長期にわたって支払われないと収支のバランスが崩れてしまい、資金繰りの悪化につながります。また、売掛金の支払いが遅延している場合は、取引先の経営が悪化している可能性を示しています。支払遅延が続いている取引先との契約継続は、共倒れの恐れもあるので注意が必要です。共倒れを回避するためにも、売掛金の遅延が続いたときは出来るだけ早いタイミングで督促を行い、早めの回収に努めましょう。

チェックアイコン過剰な割引サービスを行っている

取引先からの要望や新規顧客を獲得するために、商品やサービスの過剰な割引を行うと売上原価や宣伝広告費などのコストが高くなり、収益率が低下してしまいます。収益率が低下してしまうと赤字経営に陥ってしまうことも少なくありません。

赤字経営でも現金があればどうにかできると思っている方もいますが、赤字経営になることでさまざまな弊害が生じます。例えば、赤字経営が一時的なものではないと判断されてしまうと、返済能力がないとみなされて銀行から融資を受けることができなくなります。さらに社会的信用も失われるため、会社の評価自体も低下してしまいます。

このような負の連鎖が起きてしまわないように、適切な割引を行うように事前に社内で決めておきましょう。

チェックアイコン資金や在庫の管理ができていない

企業は売上だけでなく、仕入れや物件の賃貸費用、オフィスの水道光熱費、人件費などの支出があり、支出を減らさないと会社の純利益を増やすことはできません。高額な家賃を支払うと経費として計上でき、税負担の軽減ができるので節税対策が可能です。

しかし、家賃などは毎月支払いが必要な固定費になるため、毎月の支払額がかさんでしまいます。敢えて支出額を大きくして節税対策を行うよりも、適切な金額で手元に残る資金を多くしたほうが資金繰りに苦しむことはありません。在庫に関しても、たくさん保有していても期限があったり品質が落ちてしまったりするので、在庫を仕入れて管理するコストを抑えるために適切な在庫を管理することが重要です。

チェックアイコン資金繰りの計画を立てていない

資金繰りの計画を立てていないと、資金の流れを把握することができないため、資金繰りが厳しくなる要因になります。

事業計画と混同してしまう方も多いですが、事業計画は事業の目的を達成するためのコンセプトや収益計画について着目しています。一方で、資金繰り計画は資金の出入りに着目しているもので「どの時期に大きな支出があるか」「資金調達をするタイミングはいつ頃が適切か」といった入出金の予測や資金不足の把握、改善策を講じるために必要です。

借り入れの返済や設備購入による支出と売掛金の回収時期などにずれが生じるのが一般的です。そのため、資金繰り計画を立てていない企業は現金が不足して、黒字倒産する恐れがあります。企業の安定した経営には、資金繰り計画を立てることは必須といえます。

資金繰りが厳しい時の対処法

資金繰りは会社を経営するうえで避けて通れない問題です。経営自体に問題がなくても、予期せぬトラブルが発生したり、社会情勢が大きく変動したりすることで、資金繰りが厳しくなる場合もあります。

資金繰りが厳しくなった時でもしっかりと対処をすれば状況は改善されます。いきなり資金繰りが厳しくなった時にも迷わずに対処できるようになるためには、適切な対処法を身につけておきましょう。

丸資金繰りが厳しくなった原因を調べる

原因がわからないと対処することができないので、まずは資金繰りが厳しくなった原因を調査します。固定費や人件費などコストを削減できるところはないか、社内の管理体制に問題はないかなどを確認します。

一時的に資金繰りの問題が解決したとしても、根本的な原因が判明しないと同じような問題が繰り返される恐れがあります。社内だけで問題が解決しない場合は、外部の専門家への相談も検討しましょう。

丸資金繰り計画表の作成・見直し

資金繰り計画表を作成していない企業は、まず作成を行い、作成している企業は改めて内容を見直しましょう。

前述したように、資金繰り計画表は収入や支出を可視化できるため、資金の不足・過剰といった状況の予測が可能です。また、売上の入金や仕入れ・経費などの支出のタイミングのずれを把握することで、資金不足のリスクを回避できます。

さらに、資金繰り表の作成と見直しを繰り返すことで予測と実績を比較することができ、資金管理の精度を高め、経営に役立てることができます。まだ、作成したことがない企業は作成してみることをおすすめします!

丸遊休資産や在庫の見直し

資金繰りを改善するには、遊休資産や現在保有している在庫の見直しが必要です。

遊休資産とは、事業用に保有しているものの、用途がなく活用されていない資産のことです。具体的には、土地や不動産、機械設備、工場などの有形固定資産だけでなく、ソフトウェアなどがあります。活用していない資産を保有していても、固定資産税や維持費などの管理コストが発生するだけで、利益を生み出すことはできません。また、活用できない在庫も管理スペースを圧迫してしまい、資金を停滞させてしまう原因になります。

そのため、活用できていない遊休資産や在庫などは定期的に見直しを行い、維持コストの削減や値引き販売による現金化が可能になり、資金繰りが改善します。

丸法的整理を検討する

自社で資金繰りが厳しい状況の改善が困難な場合は、法的整理も視野に入れたほうが良いでしょう。法的整理とは、裁判所を通じて債権を整理して再建を目指す手続きを指します。法的整理をしたからといって必ずしも倒産を示すということではありません。

法的整理には以下の選択肢があります。

民事再生 破産を回避して、事業の継続・会社の再建を目指す方法
会社更生 裁判所が監督を行い、更生計画書を作成し、会社の再建を目指す方法
特別清算 裁判所が監督するもとで、精算手続きをする方法(債権者の同意が必要)
破産 事業を終わらせることを前提とした手続きで、債権者の同意は不要となる方法

民事再生と会社更生は再建型となり、特別清算や破産は精算型となります。

丸資金調達をする

無駄な支出やコストを削減出来たら、資金調達を行いましょう。資金調達は、銀行からの融資やクラウドファンディング、助成金・補助金制度の活用などの方法があります。

それぞれのメリットやデメリット、手元に資金が入るまでにかかる時間が異なるため、どの方法を選択するかは企業の判断となります。自社の状況やニーズにあった資金調達の方法を選びましょう。

資金繰りが厳しいときの注意点

資金繰りが厳しい時は何から手を付ければいいか分からなくなってしまいます。そのような状況だからこそ冷静に判断して適切に対応することが重要です。

ここでは、資金繰りが厳しいときに優先すべきことやしてはいけないことを紹介していくので、しっかりと抑えておきましょう。

支払の優先順位ををつける

まず気を付けなければならないのは、支払の優先順位の付け方です。優先順位をつけるポイントは、「緊急性の判断」「交渉の可否」「影響の大きさ」の3つです。

「緊急性の判断」は、支払わなければいけない債務の中で法的な問題やリスクを伴う緊急性の高いものから優先的に支払うことが基本です。この判断を間違えてしまうと、業務停止や追加で料金が発生する恐れがあります。また、長期的な付き合いや良好な取引関係を築けている取引先へ支払期限の延期や条件を変更してもらうように交渉することも、優先順位をつけるためには必要です。

そのほかに支払を遅らせたことによるペナルティや追加で発生するコストの影響が最小限になるように、支払うべき順序を決定しましょう。

上記を参考にして以下のような優先順位を覚えておきましょう。

・小切手や約束手形の支払い
・従業員の給与
・税金の支払い
・銀行からの借入返済

最も優先すべきなのは、信用に関わる小切手や約束手形の支払いです。6か月以内に2回の不渡り(期日までに支払いができない)が起きると、金融機関との取引が2年間できなくなります。金融機関との取引ができないと正常な経営が困難になるので、実質倒産といえるでしょう。次に優先されるべきは、従業員の給与支払いです。給与を支払わないと刑事罰の対象となるので、世間からも犯罪として認識されます。それだけでなく、給与の未払いは従業員からの信用も失うため、従業員が離職してしまい、事業が成り立たず倒産する可能性があります。

一方で、銀行からの借入返済を優先しなければならないと感じる方もいるかもしれませんが、銀行にとって借入金の返済ができずに企業が倒産するのは1番避けたいことです。そのため、金融機関へ相談すると返済期間の延長や条件変更を提案されるので、支払が厳しい場合はまず相談してみるのがおすすめです。

金融機関以外(ノンバンク)で借り入れをしない

ノンバンクは金融機関の審査よりも厳しくないため、比較的簡単に借り入れが可能でとても便利です。

簡単に借り入れができる一方で、金融機関よりも金利が高いのが一般的です。また、ノンバンクから借り入れを行うと信用情報に記録されるため、財務状況が悪いと判断され、金融機関からの信用を失う恐れがあります。

ノンバンクで借り入れをするとさまざまなデメリットがあるため、資金繰りが厳しい時でも利用せずに済むようにほかの対策を講じましょう。

融通手形の発行

融通手形とは、実際の取引がないにもかかわらず、資金調達のために振り出される手形のことを指します。現金を必要としている人が融通してくれる人から、債務がないのに振り出してもらう手形です。

融通手形の多くは、金融機関から借り入れできない企業が資金繰りのために利用するケースが多いです。計画的に返済ができれば問題ないですが、トラブルが起きてしまうことも少なくありません。万が一、返済できなかった場合は手形を渡した側と受け取った側の双方の信頼を損ねるリスクがあるので、可能な限り利用をせずに資金調達を行いましょう。

黒字倒産をするケース

赤字で倒産したという話をよく耳にしますが、黒字で倒産するケースもあります。どのような状況で倒産したと判断されるのか、実例を挙げながら解説します。

黒字倒産とは

黒字倒産とは、帳簿の記録上で収益が出ているにもかかわらず、支出に必要な資金が不足することによって倒産してしまう状況をいいます。

黒字倒産が起きる原因は「資金繰りの管理体制が整っていない」「過剰な在庫保有・設備投資」「売掛金の回収遅れ」などが挙げられます。前述した「資金繰りが厳しい企業の特徴」と同様の原因です。実際にどのようにして黒字倒産したのかを実例とともに紹介します。

関連記事:なぜ黒字倒産はおきるのか?実際の事例・原因と対策を解説

黒字倒産をした企業の実例

黒字倒産をした企業の実例としてよく挙げられるのは、株式会社アーバンコーポレーションです。上場企業で不動産業の大手として知られており、黒字倒産をする年度を除き、直近数年間は黒字決算でした。

ただ、不動産業市場が不況だったときに、好況だったときと変わらず仕入れを続け、多くの在庫を保有して資金を滞留したことによって、金融機関へ融資を受けました。その結果、支出に必要な資金の資金調達も、徐々に困難になり、黒字倒産する流れとなりました。

この企業は「過剰な在庫保有」によって黒字倒産しましたが、企業によって原因はさまざまです。資金繰りが厳しい時や厳しくなる前に1度専門家に相談することを検討しましょう。

資金繰りが厳しいと感じたときには相談を!

今回は、資金繰りが厳しい理由や対処法、当てはまる企業の特徴、注意点について解説しました。資金繰りが厳しくなるとなかなか冷静な判断をすることが難しいですが、事前に対処法や要因を把握しておくと落ち着いて対応することができます。

ただ、頭では理解できていても実際にどのように動けばいいのか混乱してしまう場合もあります。どの順序で対応すればよいか迷ったときには1度相談してみましょう。

当事務所では、現在無料で相談を受け付けているので、対応に困っている方はぜひお気軽にご連絡ください!

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関連記事:【なぜ審査が通らない?】銀行から融資を受ける際のポイントについて解説

投稿日: 2025年6月2日   9:31 am

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