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給与計算を税理士に依頼すると違法になる?社労士に頼む場合との違いも解説

違法?

従業員が1人でもいると給与は発生し、給与計算も必要になります。従業員が少人数であれば、余裕をもって社内で手続きを行うことができますが、会社の規模によっては社内では対応できない業務になってしまいます。

給与計算は、従業員の給与及び生活に関わり、ミスが起きると労働基準法にも関わる重要な事項になります。給与計算ミスや法令違反などは、トラブルや信頼を失ってしまう原因になってしまうため、社内ではなく社外の専門家に頼って給与計算をしてもらう必要があります。

依頼をする場合に、給与計算に関しては税理士に依頼をするべきか、社労士に依頼するべきか判断が難しいため、悩む方が多いでしょう。

この記事では、雇用主様向けに給与計算を誰に頼むのが良いか、それぞれの業務内容やメリットデメリットを解説しながら、お伝えするので是非参考にしてください。

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関連記事:給与計算は誰に依頼すべき?税理士・社労士に依頼する違いを解説

給与計算を税理士が行うのは違法ではない

日常的に給与計算に携わる方は少なく知識も少ないため、税理士と社労士のどちらに依頼してよいのか判断が難しいでしょう。結論からお伝えすると、給与計算に関しては、税理士と社労士どちらに依頼しても違法ではありません。

税理士と社労士のどちらも難関試験に合格した専門家にあたり、給与計算業務を規制する法律がないため、外部へ委託することが可能となります。

ただ、どちらも専門性や業務範囲などの給与計算以外にできる業務が異なるので、それぞれの業務内容を理解したうえで、どちらに依頼をするか検討する必要があります。

比較|税理士と社労士の違い

税理士は「税金の専門家」として位置づけられており、社労士は「労務や人事の専門家」といえます。税理士は、所得税や消費税などの生活に密接した税金や、財務諸表の作成などの会計業務を行うことが主な業務内容になっています。

社労士は、労働社会保険の手続きや雇用管理、人材育成などの労務管理の相談や指導が主な業務内容になっています。

また、専門的な分野になるため、独占業務と呼ばれる資格保有者しか行うことができない業務があり、主な業務内容と併せて以下の表にまとめたのでご覧ください。

税理士

社労士

主な業務内容

・税務関係

・会計業務

・経営コンサルティング

・相続

・事業継承コンサルティング

・保険関係の手続き

・労務関係

・就業規則コンサルティング

業務内容の具体例

・確定申告書類の作成や年末調整

・源泉所得税納付書の作成

・記帳の代行

・会社設立時の手続き・資金調達支援

・保険関係の届出

・年金の手続き

・傷病手当や出産手当等の手続き

・各種助成金申請手続き

・賃金制度や人事制度の相談

・就業規則の作成

・都道府県労働局が行う調停手続きの代理

・個別労働関係紛争解決促進法に基づき都道府県労働局が行うあっせん手続の代理

独占業務

・税務代行

・税務書類の作成

・税務相談

・申請書や申告書の作成

・行政機関等への提出代行

・事務代理

上記の表をご覧いただくとそれぞれの特徴がつかめるのではないでしょうか。

税理士・社労士に依頼するメリット/デメリット

メリットデメリット

税理士と社労士では、行う業務内容が異なることは理解したうえで、企業に必要な業務を行ってくれる方を選ぶことが重要です。しかし、給与計算のみを依頼する場合はどちらを選択すればいいか迷うでしょう。

判断が難しい場合は、双方へ依頼するメリットやデメリットを比較して、企業にとってメリットが多く、必要としている業務を行うことができる専門家へ依頼しましょう。

税理士に依頼するメリット

税理士に給与計算を依頼する場合のメリットは、毎月の給与計算業務から年末調整処理まで行うことができる点です。日々の給与計算を行っていれば、年末調整も円滑に行うことができ、年末調整に関する法定調書の作成や源泉徴収票の作成は税理士の独占業務になるため、税理士に依頼する最大のメリットになります。

また、住民税や所得税、従業員の支払総括表、支払報告書の電子申請まで任せることが可能です。税金に関する相談もでき、企業の法人税や社会保険料に関する節税の相談をすることができるので、企業にとって経営上の悩みを解決することができます。

関連記事:税理士の独占業務とは?何を依頼できるのか解説!

社労士に依頼するメリット

社労士に給与計算を依頼するメリットは、労務や社会保険関係の手続きの効率化を図ることができる点です。4月などの入社時期になると、新入社員の雇用保険や社会保険、健康保険などの手続きが必要になります。保険関係の手続きは社労士の独占業務にあたるため、従業員の保険の手続きから給与計算まで一括で手続きを行うことができ、日々の負担が軽減されます。

また、日々の勤怠状況を給与計算に正しく反映させることは、健全で基本的な労務管理が必要になります。雇用に関する助成金を申請する場合は、出勤簿と賃金台帳の整合性が厳しくみられ、適正な労務管理が行われているかという確認が行われます。給与の支払いデータから、残業代の未払いや長時間労働の確認を行い、労働環境の課題や内容の問題解決に関しては、社労士の専門業務になり、税理士では行うことができません。

従業員の人数が多いと、取り扱う社会保険や雇用保険の件数も膨大な数になってしまい、社内の担当部署でも対応することが困難になってしまうため、社労士に依頼することが社内の業務量を軽減する一助になります。

関連記事:就業規則を作成する費用はいくら?相場や作成時の注意点を解説

関連記事:社労士の独占業務とは?どんな時に依頼するのか詳しく解説‼︎

税理士に依頼するデメリット

税理士に依頼するデメリットは、雇用保険や雇用保険関係の助成金代行ができないことが挙げられます。そのため、従業員の入退社の雇用保険に関する手続きや社会保険の手続きを給与計算と併せて依頼を考えている企業に対してはデメリットになり得ます。

雇用保険に関する手続きや労務関係の相談に関しては社労士の業務の範囲になってしまうため、税理士が手続きを行った場合は違法となるので注意が必要です。

また、税理士に依頼する場合は、給与計算だけでなく年末調整や税金に関する相談まで対応してもらえるメリットがありますが、税金に関する業務を依頼すると費用が高くなる可能性があります。費用に関して特に問題がなく、社会保険などに関して依頼する必要がなければ、税理士に依頼してもデメリットはないかもしれません。

社労士に依頼するデメリット

社労士に依頼するデメリットは、税務業務を行うことができない点です。給与計算の延長線上となる年末調整の法定調書や源泉徴収に関する書類の作成などは、税理士の独占業務になるため、行ってしまうと違法になります。

年末調整が税理士の独占業務と位置付けられたのは、日本税理士会連合会と全国社会保険労務士連合会との間で2016年6月に確認されたためです。

給与計算や社会保険の手続きを行うことはできるので、税務業務を必要としていない場合は、社労士に依頼するデメリットはないといえます。

依頼する際の費用の相場は?

双方どちらに依頼するにしても、費用が発生するので、費用も比較したうえで税理士と社労士どちらを選択するか判断しましょう。また、あくまで相場になるため、給与計算以外の業務に関して依頼を検討している場合は、近隣の税理士事務所や社会保険労務士に相談してみるのが比較しやすいため、見積もりなども検討してください。

人数

税理士 社労士
~10人

~20,000円

10,000円~25,000円
11~30人

20,000円~35,000円

25,000円~35,000円
31~50人

35,000円~55,000円

35,000円~50,000円
51人~

55,000円~

50,000円~

給与計算を依頼する基準をケースごとに紹介

給与計算を依頼するにあたって、業務内容や費用、メリットとデメリットを比較した上で判断ができない場合は、会社の規模で選択してみるとわかりやすいかもしれません。

企業の必要としている業務によって異なりますが、判断基準の一つとして参考までに解説していきます。

数人規模の場合は税理士

数人規模の会社の場合は、税理士がおすすめです。数人規模の会社は顧問税理士と契約しているケースが多いため、給与計算を依頼できるか確認しましょう。

顧問税理士の場合は、今まで行っていたやり取りの経験から、会社の業務内容や状況、従業員に関して内情を把握できている部分が多いため、業務を始める手順がとてもスムーズになります。

社労士に依頼する場合は、会社の業務内容や状況を説明することや、説明実情の把握から始めることが必要になるため、少し手間がかかります。

現在、契約している顧問税理士がいる場合は、給与計算の契約が可能かという確認と追加の費用がどのくらい発生するのか確認をしましょう。

数十人~数百人の場合は社労士

規模が数十人~数百人になる場合は、社労士がおすすめです。このような規模の会社になると入社・退職する機会が多く、休職・育児休暇を取得する従業員が増加し、手続きが多くなります。

労務関係の手続きや社会保険などの手続きに関しては税理士が行うことができない業務内容になるため、社労士に依頼しましょう。税理士と別途で費用は発生しますが、膨大な量の給与計算や社会保険などの各種手続きを一括で依頼することができるため、メリットは大きいです。

1,000人以上の規模はアウトソーシング会社

会社の規模が1,000人以上になる場合は、給与計算の会社へアウトソーシングを行いましょう。1,000人以上の規模になると、税理士や社労士では対応が困難になります。

規模が大きい場合は、給与計算システムを構築し、実務に関しても社外に依頼した方が良いでしょう。給与計算システムを開発している会社であれば、アウトソーシングに対応している会社も多いので、確認しましょう。

給与計算システムを利用することで、給与計算担当者の人材コストや専用ソフトなどに関するコストの削減が期待できます。また、税制や社会保障制度に関する法令は、毎年改正が行われるため、社内の担当者が対応し続けることは難しく、次世代に教育を行う際に誤った情報の伝達が起きてしまうリスクもあるため、社員の負担がとても大きいです。アウトソーシングだと専門家に任せられるため、法改正の自動化や従業員がコアな業務に集中でき、社員への負担が軽減されます。

社外に依頼する際の注意点

メリットやデメリットについて解説しましたが、社外に依頼する際に注意するべきことを3つ紹介します。注意点を確認し、それぞれの企業に合った依頼を行いましょう。

業務範囲を理解し、適切な依頼を行う

税理士も社労士も給与計算を依頼することは可能ですが、給与計算外の業務に関しては、それぞれの専門業務外については携わることができない点には注意が必要です。行うことができる業務を把握できていないと、場合によっては違法になってしまうことがあるので、双方の業務範囲をしっかりと理解したうえで、適切な依頼を行いましょう。

税理士は給与計算から年末調整まで一任することができますが、労務関係に関して手続きを行うことができません。

社労士は、給与計算のほか、労務や社会保険の手続きに関して依頼することはできますが、年末調整業務に携わることは違法となります。

社内で依頼したい業務を確認したうえで、双方どちらに依頼するかを明確にしましょう。

専門家との相性や緻密にコミュニケーションが取れるかを確認する

税理士や社労士に給与計算を依頼するときに、コミュニケーションがしっかりとれるか確認しましょう。また、適切な資格や経験の有無や給与計算の実績があるか調査を行いましょう。

ほかのクライアントからの評判や過去の実績などを確認した上で信頼できるのか、円滑にコミュニケーションが取れるのか判断します。専門的な給与計算業務を正確に行い、法的コンプライアンスを順守できる税理士や社労士に依頼を行います。

今後の円滑な業務を行うために、信頼関係を築いていけるのかを事前に調査する必要があります。依頼した先が適切な会社でない場合は、契約した自社も社会的信用を失う可能性が高いため、事前調査と最初の顔合わせを行う際は、細心の注意が必要になります。

サービス内容や契約条件を明確にする

依頼する際に、サービス内容や契約条件を明確にしましょう。具体的な業務内容や給与計算に関する範囲、報酬体系や料金、納期や契約期間などの詳細について明示してもらい、双方の合意の上で契約しましょう。

サービス内容や契約条件を確認することで、認識相違やトラブルが起こることを未然に防ぐことができ、これからの円滑な業務遂行と信頼関係の構築につながります。

雇用関係助成金の申請について

雇用関係助成金とは、厚生労働省が所轄で扱っている「人材の雇用に関する条件を満たすことでもらえる支援金」のことです。助成金は、雇用維持関係や再就職支援関係、雇用環境の整備に関するものがあり、企業が雇用状況を維持できるように、休業手当や職業訓練の一部を国が負担する制度のため、多くの企業が申請を行うことができます。

雇用関係助成金に関する申請書の作成と提出は、労働・社会保険諸法令に基づく申請書に該当するため、社労士の独占業務になり、税理士は業務に携わることはできません。

しかし、雇用関係助成金を申請するにあたって、条件として設けられている売上の減少などの「生産性要件」を満たすかどうかの判断については社労士が判断することができず、税理士の協力が必要になります。

雇用関係助成金の申請については、税理士と社労士のどちらも関係してくる内容になるため、双方が連携して業務遂行に尽力することが、助成金の申請が成功するポイントになるでしょう。

また、企業にとって税理士や社労士などの士業は、経営に関する税金や労務関係のアドバイスが受けられる貴重な専門家です。税理士、社労士共に連携することができる関係を築いていくことによって、企業は多方面から有益なアドバイスを受けることができます。

給与計算業務は専門家に任せよう

税理士や社労士に依頼することで、料金は発生しますが、給与計算業務に派生した税務業務や労務関係の業務などの複雑な業務を依頼することが可能です。

税務や労務に関する業務は専門知識が必要になるため、会社の規模が大きくなるにつれて社内では対応できなくなる可能性があります。社員への負担が大きい業務になり、ほかの主要な業務に支障が出てしまうことが考えられます。

そのため、専門家に依頼することで、ほかの業務を行うことができるようになるため、依頼するメリットとデメリットを理解し、会社の規模や過不足のある業務に関して確認を行い、依頼を行いましょう。

税理士と社労士の両方の資格を保有!

税理士に給与計算を依頼することは違法にあたるのか、税理士と社労士に給与計算を依頼するメリットやデメリットについて解説しました。それぞれの業務内容を理解したうえで依頼が必要な業務を確認して依頼を行いましょう。また、詳細な業務に関して依頼することが可能かどうかは素人では判断することができないため、社内で議論するよりも専門家に確認してみてください。

また、企業によって社内の従業員で行うことができる業務とそうではない業務があるため、費用を比較したうえで、必要な業務は外部へ依頼することで従業員の負担を軽減することができます。負担が軽減することで、ほかの業務を効率よく進めることができ、事業の活発化に繋がる可能性があるため、積極的に専門家に相談してみることをおすすめします。

松原税理士・社会保険労務士事務所では、税理士と社労士の両方の資格を保有しています。それぞれの専門家としてお得にサポートできます。税務業務に関する悩みや労務関係の手続き、人事関係に関する手続きの両方を承ることが可能です。給与計算の方法が分からないという方、業務をどこまで外部に委託しようかと検討している中小企業のご担当者様および個人事業主の方は是非お気軽にお問い合わせください。

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投稿日: 2024年5月7日   9:53 am

更新日: 2024年9月19日   9:41 am

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