個人事業主でも、税務調査が実行される可能性があります。
実際に、確定申告をした個人事業主の約1%は税務調査が入っています。
そこで本記事では、個人事業主でも税務調査が実行されるケースや税務調査の対策について解説します。
税務調査について気になっている個人事業主の方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてくださいね。
Contents
税務調査には任意調査と強制調査がある
税務調査とは、納税者が正しく税金を納めているかを調査することであり、管轄している税務署によって実行されます。
法人税や所得税などが正しく申告されているかを確認し、間違いや申告忘れがあった場合は事業所などに直接訪問して調査を実行します。
税務調査は確定申告をしているすべての方が対象であるため、法人だけではなく個人事業主も来る可能性があります。
税務調査には任意調査と強制調査の2つがあるので、それぞれ特徴を確認しましょう。
任意調査
任意調査は、多くの法人や個人事業主が対象となる調査です。
任意調査では事前に税務署から調査を行う旨の連絡が入るため、連絡が来たら対応ができるように準備出来ます。
ただし、事業のありのままの姿を確認したい場合には、事前連絡がない状態で調査が実行されるケースもあります。
また、税務調査官には質問調査権が与えられているため、質問内容を理由なく拒否したり、偽って申告したりした場合は罰則されます。
税務調査が入った時点で、誠実な対応をするよう意識してください。
強制調査
強制調査は、国税局が強制的に調査を行うことです。
任意調査とは違い事前連絡がなく、ある日突然調査が実行されます。強制調査では調査官が裁判所からの令状をもっており、警察の家宅捜査の税金バージョンといえるでしょう。
強制調査が実行されるケースとしては、悪質な隠蔽工作があるケースや1億円以上の脱税が発生した場合などです。
また、強制調査を拒否した場合、国税通則法128条では、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が処せられる旨が規定されています。
個人事業主では少ないですが、念頭に置いておきましょう。
個人事業主はいくらから税務調査の対象か
税務調査が実行される目安は、売上が1,000万円とされています。
売上が増えれば納税額も増えるため、税務調査の対象とされやすくなります。
しかし、1,000万円以下でも、税務調査が実行されるケースもあり注意が必要です。
売上が1,000万円より多い場合
売上が増えると納税額も増え申告時の間違いが発生しやすく、調査が実行されやすくなります。
また、個人事業主は売上が1,000万円より多いと課税事業者となり、所得税だけでなく消費税の申告をしなければなりません。
このときに消費税の申告漏れが発生しやすく、税務署から指摘される可能性があります。
売上が1,000万円以下でも対象になることも
上述した売上の1,000万円は、あくまでも目安になります。
実際に税務調査が実行される確率として法人が約3%・個人が約1%とされており、売上が1,000万円以下でも税務調査が実行される可能性は十分にあります。
例えば、以下のケースなどが挙げられます。
- 現金取引が多い
- 経費が極端に増加している
- 売上の減少幅が大きい
- 売上がギリギリ1,000万円に到達していない年が多い
- 売上に対して利益が少ない
このようなケースでは、金額の大きさにかかわらず税務署側が不審に感じる場合があり、税務調査が実行される可能性が高くなります。
そのため、普段の帳簿付けや税務申告を正しく行わなければなりません。
税務調査が実行される要因とケースを紹介
ここでは、税務調査が実行される主なケースや要因について解説します。
税務調査が実行されるには、売上の増減や経費の計上など様々な要因があります。
いくつか紹介します。
確定申告をしていない場合
税務調査が実行される要因として、そもそも確定申告をしていないケースが挙げられます。
売上高1,000万円より多いと課税事業者となり、所得税だけではなく消費税の申告も必要になりますが、消費税の申告が漏れているケースが多くあります。
特にインボイス制度の導入に伴って課税事業者になった方は、消費税申告の対応をしなければいけないため注意してください。
確定申告をしなかった場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課せられるケースがあるので、確定申告は必ず行いましょう!
関連記事:赤字でも個人事業主は確定申告をするべき!?メリットについて解説
経費計上の方法が疑わしい場合
経費の計上は、税務調査で指摘を受けやすい項目です。
特に個人事業主の場合、経費に含んではいけない部分を入れている場合が多く、指摘を受けやすくなります。
また、プライベートで使った費用を経費にしている場合も、税務調査では指摘を受けやすいのでしっかり区別しなければなりません。
何を経費にしてよいか分からない場合は、税理士に相談しましょう。
また、税務調査に入った際に、経費の説明ができるように領収書はしっかり保存してください。
取引先に税務調査が入った場合
取引先で税務調査が実行されることがきっかけで、税務調査が実行されるケースがあります。
取引先の税務調査で領収書や請求書を確認されますが、そこに自身が発行したものがある場合に、お金の流れから関係性を疑われ税務調査が実行されるケースがあります。
売上の急増している場合
売上が急増した場合、個人事業主でも税務調査が実行されやすくなります。
理由としては、売上が増えると経費も増加するため事務作業が複雑化し、計上漏れなどが起きやすくなるからです。
事業を始めて3年経った場合
事業を始めて3年が過ぎると、税務調査が実行されやすくなります。
なぜなら、開業してから間違った状態で会計処理をしていないか、確認をするためです。
また、税務調査でも過去3年分を遡って調査ができるのも理由です。
もちろん3年が過ぎたら必ず税務調査が実行されるわけではなく、なかには開業して10年が過ぎても税務調査が実施されない個人事業主もいます。
ただし、事業を開始して3年が過ぎたら、領収書などの書類や会計処理の方法などを改めて見直すことも検討すると良いですね。
個人事業以外の税務調査について知ろう
個人事業以外にも、税務調査が実行されるケースがあります。
例えば、相続税も申告の必要があり、税務調査が実行される場合です。
また、副業でも税務調査が実行されるケースもあります。
相続を受けた後に相続税を申告した
相続は一定の金額を受け取ると申告する必要があり、申告内容に不備があれば税務調査が実行されるケースがあります。
相続税の場合、申告してすぐ税務調査が実行されるわけではなく、通常は申告して1〜2年後に実行されることが多いです。
相続の税務調査では、現金の保管方法や有価証券の保有状況・不動産の売買などが対象です。
相続税は事業によって発生するわけではありませんが、誰にでも可能性があるため念頭に置いておきましょう。
副業所得が20万以上ある
副業で所得が20万円を超えた場合、確定申告が必要なため税務調査の可能性があります。
所得が少ない場合、税務調査が実行されることは多くありませんが、実際に少額で入ったケースもあります。
また、副業の所得が20万円未満でも給与所得がある場合、住民税を納めなければなりません。
会社員でこれから独立を考えている方は、副業でも税務調査が実行される可能性があることを理解しましょう。
税務調査時の正しい対応について知ろう
上述したように、税務調査は断れません。
税務調査が実行された場合は、必要書類を事前に用意して真摯に対応しましょう。
適切なコミュニケーションを意識する
税務調査が実行されたら、適切にコミュニケーションをとることが重要です。
その場で答えられない内容は、後日調べて回答してもよいですが、曖昧な回答は調査官の印象を悪くします。
質問されやすい事項については、スムーズに回答ができるように予め準備しましょう。
また、質問事項以外の内容については、答えないことも大切です。
質問内容から的外れな回答をすると、そこから別のことを疑われやすくなります。
必要書類は事前に用意する
税務調査が入った場合は、帳簿や領収書などを事前に取り揃えておきましょう。
個人事業主の場合、税務調査では以下の書類を確認されます。
・確定申告の控え
・決算書(損益計算書、貸借対照表)
・帳簿(仕訳帳、総勘定元帳など)
・請求書、納品書、領収書
・棚卸表
・預金通帳
・従業員名簿、源泉徴収簿
税務調査では、過去の申告についても調査対象になるため、確定申告の控えは3年分、請求書や領収書は3年分用意するとよいでしょう。
税務調査後のやるべき対応について!
税務調査が終わった後も、誠実な対応が求められます。
追徴課税が発生した場合は、すぐに納税ができるように準備が必要です。
また、税務調査で指摘を受けた内容については、繰り返さないように再発防止を心がけましょう。
追徴課税への対応
追徴課税とは、申告のし忘れや無申告などが発覚した際に本来納めるべき税金と実際に支払った税金の差額を収めることです。
納める税金は、修正申告を行うか税務署が行う公正処分によって決まります。
追加課税が発生した場合一括で請求されますが、資金繰りに影響する可能性があります。
特に銀行への返済に影響する可能性が高い場合は、早い段階で銀行へ相談しましょう。
納税遅滞への対応
追徴課税は基本的に期限はありませんが、税務署から催告などに応じなかった場合に差し押さえされるケースがあります。
さらに、追徴課税の納税が遅れるほど延滞税が増えるため、注意しなければなりません。
追加課税は基本的に一括で納税する必要がありますが、特例として分割で支払うことも可能です。
しかし、分割払いでも1年以内に支払いを求められ、延滞税も増えるので結果的に負担が大きくなることもあります。
追徴課税を分割で納める場合は、延滞税のことも意識しましょう。
再発防止を心がける
当然ですが、税務調査が入った場合、再発防止を心がけましょう。
過去に税務調査が入った場合、申告内容や不正などを税務署から疑われるケースが多くあり、再発防止につとめなければなりません。
また、過去に指摘をした内容が正しく行われているか確認する必要があるため、必然的に調査対象になります。
一度税務調査が入った場合は監視されやすい状態になるので、過去に受けた指摘事項を繰り返さないように意識しながら事業を行いましょう。
関連記事:税務調査後の修正申告の流れとは?修正が必要になる場合やペナルティについて
税務調査は税理士に相談することがおすすめ
税務調査が入った場合は、まず、税理士に相談することがおすすめです。
税理士に相談すると、税務調査に必要な書類や対処方法について教えてくれます。
さらに、税理士に税務調査に立ち会ってもらうことも可能で、質問事項によっては税理士が代わりに回答できます。
税務調査では調査項目や必要書類が多く質問事項も難しい内容もあり、個人で対応することは困難に感じるでしょう。
税理士がいれば安心して税務調査に望めますので、ぜひ一度相談してみてください。
なかには、税務調査に強みをもっている税理士もいるため、気になる方は税務調査対応の実績を確認してみましょう。
専門家に聞いて経理業務を正しくおこなおう!
ここまでご説明したように、税務調査が入りやすい目安はありますが、事業規模に関わらず、どなたでも入る可能性があります。
申告漏れで追徴課税にならないよう、日々の経理業務を正確に行うことが何より重要です。
事業がうまくいっていても正しく税務申告ができておらず失速する方も多いです。
確定申告で疑問に感じた場合や今の経理業務に不安な方はご相談ください。
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