個人事業主として事業を営む際、収入だけでなく経費の計上も重要です。特に、青色申告制度を利用する場合、経費の適切な計上が節税効果を生むポイントとなります。
この記事では、青色申告における経費項目の選定や計上のポイントに焦点を当て、事業主が正確に経費を計上し、節税を実現するための方法を詳しく解説します。
青色申告について理解しよう
まずは青色申告の概要について紹介していきます。
青色申告と白色申告について
個人事業主の確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、青色申告は、個人事業主が行う確定申告の制度の一つです。
日本の税制度では申告者が自分で所得金額や税額を算出して納税するため、納税者が経費として認められる項目を知っておくことは、正しく確定申告を行うためにも重要です。
個人事業主として開業した場合、基本的には白色申告を行いますが、「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、税務署の指定に従った帳簿作成や提出書類を作成することで青色申告者として確定申告を行うことができます。
青色申告を行うメリット
青色申告を行うメリットは、大きく分けて以下の3点です。
1、65万円・55万円・10万円の控除が可能
青色申告を行う最大のメリットは「青色申告特別控除」が適用されることで最大65万円の控除が受けられることです。青色申告特別控除を受けるためには複式簿記での記帳、貸借対照表と損益計算書の作成、電子申告による確定申告の提出などの条件があります。
2、赤字になった場合、3年間の繰越が可能
事業が赤字になった場合、その赤字を3年間先まで繰り越すことが可能です。3年以内に黒字に転換すれば、過去の赤字分を相殺し、節税効果が期待できます。繰越控除を行う際は、確定申告時に申告書第四表(損失申告用)を同時に提出します。
3、青色事業専従者給与・専従者控除が適用される
通常、従業員に支払う給与は経費として認められますが、家族に支払う給与は一般的に経費とは認められていません。ただし、商店などで家族が手伝いをするケースが多いことから、専従者控除制度が導入され、一定の手続きと条件を満たすことで支払った給与が経費として認められるようになりました。
この制度の条件は以下の通りです。
- 個人事業主と生計を一つにして暮らしている配偶者や親、祖父母、子ども
- その年の12月31日現在で、年齢が15歳以上(学生は原則不可)
- 年間のうち6ヶ月以上はその事業に従事すること
このように、青色申告には白色申告にない様々なメリットがあります。
青色申告で経費計上できる項目
続いて、青色申告の際に経費計上できる項目について解説していきます。
旅費交通費
事業を行う上で発生した交通費や宿泊費、出張手当などは旅費交通費として経費計上が可能です。旅費交通費として計上可能な項目は以下の通りです。
- 電車、バス、タクシー、飛行機など公共交通機関の運賃
- 高速道路などの有料道路の料金
- 宿泊費や出張手当
- レンタカー代など移動に伴って発生する費用 など
また、ガソリン代については旅費交通費として計上することもできますが、後述する車両費として計上することも可能です。
接待交際費
取引先への接待や贈答などに関する費用は、接待交際費として経費計上できます。接待交際費として計上可能な項目は以下の通りです。
- 取引先への接待に伴う飲食代
- 仕事に関連するイベントの参加費
- お中元、お歳暮
- 香典や祝儀など慶弔費
- 見舞金 など
接待交際費の割合が売上に比べて極端に高いと税務調査において指摘されやすくなります。経費として計上する際には注意しておきましょう。
広告宣伝費
販売促進を目的とした広告宣伝費も青色申告で経費として計上できる項目です。広告宣伝費として計上可能な項目は以下の通りです。
- 広告制作費、広告掲載費
- ダイレクトメールの印刷費や郵送料
- ホームページやネット広告の費用
- 展示会などのイベント出展料 など
外注工賃(業務委託費・外注費)
業務委託費や外注費も青色申告で経費として計上できる費用の一つです。
確定申告を行う際には外注工賃という項目で仕訳をするのが一般的です。外注工賃は業務の一部を外部の企業や個人に依頼する際に発生する費用であり、以下のような項目が計上できます。
- 建築現場で電気工事を専門業者に委託した
- 自社製品の部品製造を部品メーカーに委託した
- 自社製品のデザインをデザイナーに委託した
- 営業代行会社に営業活動を委託した など
消耗品費
取得価額が10万円未満もしくは、使用可能期間(法定耐用年数)が1年未満の消耗品は、消耗品費として経費計上します。消耗品費として計上可能な項目は以下の通りです。
- 文房具や延長コード、マウスなどの事務用品
- 作業着や工具
- 事業用として使用する机や椅子、棚などの家具
- パソコン、プリンター、モニターなど電子機器(取得価格10万円以下に限る) など
取得した際の価格が10万円を超える場合は備品となり、消耗品費では計上できません。また、プライベートでも使用できる雑貨や洋服、書籍などは対象外となります。
地代家賃
オフィスとして使用している事務所や倉庫、駐車場の家賃は地代家賃として経費計上できます。この地代家賃には管理費や共益費、20万円未満の更新料と礼金を含めることができます。
ただし、自宅兼事務所として事業を行っている場合には後述する「家事按分」が必要です。家事按分することで、事業利用のためのスペースにかかる家賃や関連費用を正確に計上し、事業の経費として計上できるようになります。
光熱水道費
家賃を支払っている建物に支払っている水道や電気・ガスのほか、灯油など暖房用の経費も光熱水道費として経費計上できます。
事務所と自宅が別の建物の場合は事務所の光熱水道費は全額計上できますが、自宅の一部を事務所として使用している場合は、地代家賃と同じように後述する「家事按分」によって事業で使用している割合を按分して経費計上する金額を算出します。
通信費
事業で使用した通話代やインターネット料金などは、通信費として経費計上が可能です。
通信費として計上可能な項目は以下の通りです。
- 事業用携帯電話の通話料や通信料
- インターネット通信料
- 切手代、ハガキ代
- 宅急便などの配送料(商品の発送費用は「荷造運賃」で計上) など
ただし携帯電話をプライベート兼用で使用している場合は、全額を経費計上するのではなく、事業利用分を「家事按分」して計上する必要があります。
車両費
事業で使用する車両の維持管理に必要な費用は車両費として計上可能です。
車両費として計上可能な項目は以下の通りです。
- ガソリン代
- オイルやタイヤの交換代
- 車検費用
- 自動車税や自動車保険費用 など
車両をプライベートでも使用している場合、「家事按分」によって経費計上する必要があります。
減価償却費
購入費用が10万円以上かつ1年以上使用可能な固定資産は、法定耐用年数に従って分割し、経費として計上することが求められます。減価償却費は物品ごとに償却期間が定められているため、物品ごとに減価償却費を計算し、経費計上します。
新聞図書費
新聞図書費も青色申告で経費として計上可能です。
新聞図書費として計上可能な項目は以下の通りです。
- 新聞購読費
- 書籍(電子書籍)や雑誌購入費、定期購読費
- 有料情報サイトや有料メールマガジンの購読料、月額利用料
ただし事業に直接関係のないビジネス書の購入費は計上できませんので注意してください。
専従者給与
青色申告専従者給与も、青色申告で経費として計上できる経費です。
事前に税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していれば、配偶者や親族に支払った給与を全額経費として計上できます。
福利厚生費
従業員を雇用している場合、従業員のために使った費用を福利厚生費として経費計上することも可能です。
福利厚生費として計上可能な項目は以下の通りです。
- 従業員の食事代や忘年会、新年会の費用
- 香典や祝儀など慶弔費
- 従業員の健康診断費用
- 社員旅行の交通費、飲食費、宿泊費用 など
租税公課
確定申告で支払う税金も経費計上できる項目です。
租税公課費として計上可能な項目は以下の通りです。
- 事業税
- 消費税および地方消費税
- 固定資産税
- 印紙税 など
青色申告で経費計上する場合の注意点
青色申告で経費計上する場合の注意点は以下の3点です。
プライベート利用がある経費項目の場合は「家事按分」する
「家事按分」とは、自宅を事務所として利用している場合や、備品を事業とプライベートで使用している場合に行う計算方法です。
ある項目に基準を設け、その比率に従って数値を割り振ることを指します。単純な分配ではなく、一定の比率で割り振るのが按分です。
例えば、家賃の場合は建物の中で住居として使用しているスペースの面積と、事務所として使用しているスペースの面積を算出し、事務所用のスペースの面積を家賃で割り振り、金額を算出します。
家事按分の対象となる項目はこれまでに紹介してきましたが、按分をする際には家賃のような「面積」だけでなく「時間」「使用量」など項目ごとに算出の方法が異なるため注意が必要です。
関連記事:個人事業主が知っておくべき家賃の経費計上方法と按分割合の決め方
「事業支出」と「個人支出」で明確に分けられるようにする
青色申告の際、プライベートの費用と仕事の費用を明確に区別しておくことが重要です。曖昧な費用は客観的に説明が難しくなり、税務調査を受けた時に追求される可能性があります。
事業支出と個人支出を明確にするためには、領収証やレシートにメモを記載することが重要です。支出ごとに「誰に対して」「どんな目的で支払ったか」を記録しておけば、税務調査時に事業支出であると明確に説明できるようになります。
関連記事:税務調査への対応はどうするべき?税理士への依頼費用も解説
関連記事:個人事業主はいくらから税務調査の対象?
適切に経費計上しないと追徴課税の対象になる可能性も
もし、青色申告でプライベートの費用を経費として計上していたり、明確に事業用の支出であると証明できないと、税務署から罰せられる可能性が生じます。
経費計上した項目を事業用支出として証明できないと追徴課税される可能性があり、青色申告自体が取り消しになる可能性があります。
青色申告が取り消された場合、1年間は再申請ができず、新たに青色申告を行うには、税務署に再度「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
確定申告はお任せください!
今回ご紹介したように、青色申告で経費計上するための項目は多岐に渡ります。
書き方が間違っていたり、正しく経費計上しないと税務調査の際に指摘されたり、最悪の場合は青色申告の取り消しを受ける可能性がありますが、税理士に確定申告を依頼することでこれらのリスクを無くすことができます。
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