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【会社設立】定款の事業目的(内容)とは?書き方を解説

事業目的

本記事では、これから起業したい!と考えている方へ向けた、会社設立時に必要な書類である「定款」の中の事業目的について詳しくご紹介していきます。

定款ってなに?

事業目的はどのように定めていけば良いのだろう?

書き方がよく分からない

こういったお悩みを持っている方々も多いのではないのでしょうか?

事業目的を適当に記載してしまうと、会社としての信用問題にも関わる他、今後の融資にも影響が出てしまいます。

そういった方々の参考にしていただけるように事業目的の書き方や流れもふまえ、ご紹介していきますね!

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そもそも定款ってなに?

まず、そもそも「定款」という言葉を聞いたことはあるけれど、よく分からないという方に向けてご説明していきます。

定款とは、「会社のルール」が定められたもので、会社の根本的な原則が記載されており、会社を登記する際には必要不可欠な書類のことです。これは、会社形態にかかわらず、合同会社でも株式会社でも必要になります。定款を元に様々なことが決定されます。

定款に記載しなければならない事柄は大きく3つに分けられます。

絶対的記載事項

定款に必ず記載しなければならないものです。

具体的な事柄は以下の通りです。

・事業目的
・商号
・会社の本社所在地
・資本金の額
・発起人の氏名及び住所

相対的記載事項

相対的記載事項とは、法律的には記載しなくても問題はありませんが、記載しないとその事項について効力が認められないもののことです。

一例として以下の項目が挙げられます。

・株券発行について
・株主名簿管理人
・相続人等に対する売渡請求
・単元株式数

任意的記載事項

任意的記載事項とは、上記の絶対的記載事項と相対的記載事項には該当せず、かつ違法性のない内容と記載する項目のことです。

この任意的記載事項は、もし、定款に記載しなかったとしても他の文書などで明確にすれば効力は認められます。

具体的な項目は以下です。

・株主総会の開催規定
・配当金に関する事柄
・役員報酬に関する事柄

これらの事柄について設立時にバタつくことがないように事前に考えておきましょう。

定款の「事業目的」について

定款に関しては、上記でもお伝えしたように、会社設立時に必要不可欠な書類となってきます。特に絶対的記載事項に挙げられている「事業目的」は、記載内容がふんわりしていると今後融資を受けようといった場合にも銀行側にもあまり良い印象は持ってもらえません。加えて、事業目的は登記事項証明書に記載されるため、所定の手続きを行えば誰でも見られる公開情報です。さらに、銀行融資の際は明確な事業計画書が求められるのです。

ただ、会社設立をお考えの方の中には、「こういった方向性で事業を行っていきたい」というふんわりした事業目的をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

そんな方でも明確な目的を定められるように説明していきます。

事業目的には「事業内容」を提示する

事業目的とは、会社として何を事業内容とするか明確に提示するためのものです。この事業目的によって、会社としてどのような事業によって収益を得るのか明らかにします。また、明確で現実的な事業内容を記載していると、信用されやすく、資金調達や取引先との関係づくりが円滑に進みます。さらに、ただ事業内容の羅列だけでなく、会社の方向性や将来的な事業発展などを示す指針にもなるため、事業目的をしっかり設定することで、社員や役員だけでなく、金融機関や取引先の企業などへ会社のビジョンや目的を明確に伝えることが可能です。

事業目的を定める際の3つのポイント

事業目的を設定するのには、「取引の安全性確保」「活動範囲の明確化」などの理由が挙げられます。取引先や金融機関からの信用を得るために必要となるため、第三者の目線から見て分かりやすく設定することが重要です。

そこで事業目的を決める際は、以下の3つのポイントを抑えておきましょう。

違法性のあるような事業内容、犯罪などを目的とすることは当然のことながらできません。簡潔に言うと合法でないことはできないということです。当然ですが、違法薬物の輸入や窃盗、オレオレ詐欺などの犯罪に関することや違法なギャンブル業は事業目的として認められません。また、弁護士や司法書士、税理士といった資格が必要な事業は、資格がないと事業目的として設定できないため、資格が必要な事業に関しては資格取得を忘れずに行う必要があります。

また、違法性のある事業で会社設立をした場合は、登記ができなくなったり、定款の変更を求められる場合があります。許可が必要な事業に関して、許可を取得せずに会社を設立すると行政処分が科せられ、事業停止命令もしくは許可が取り消されることもあります。会社の規模や違法性の程度によって異なりますが、最悪の場合、罰金や懲役刑などが課せられる可能性もあるので、事業目的の設定は慎重に行う必要があります。

基本的に会社というものは「営利を追求する」という目的があります。そのため、寄附活動やボランティア活動などの営利性のないような事業を目的とすることはできません。

ただし、営利性のある事業目的を主としていれば、非営利な事業目的を併記することは可能です。

また、会社を設立すると、個人事業主よりも税制上の優遇を受けやすく、節税効果が高いといわれています。税制上の優遇を受けるには、営利性を持った事業活動を行わなければならないルールがあり、営利性のない事業活動を行うと、法人税や消費税などが課税対象外となります。適切なルールに則って事業目的を決めなければ、社会的信用に影響を及ぼす可能性があるので、注意が必要です。

事業目的は、取引の安全性を判断する1つの指標となるため、誰でもがその内容を理解できる必要があります。そのため、一般的に浸透していないような言葉を使用することはできません。

また、目的が具体的である必要もあります。自分の会社がどんな会社であるのか、事業目的によって他人にわかってもらう必要がありますので不明確な目的の記載は避けてください。不明確に記載してしまうと、会社が違法行為に関係していると疑われて、後々法的なトラブルに発展してしまう恐れがあります。

このようなリスクを避けるために、事業目的は誰がいてもわかるように明確に記載して、金融機関や取引先、投資家からの信用を得られるような状態を整備しましょう。

実際に記載する際の注意事項

事業目的のポイントを抑えたら、実際に事業目的を設定しましょう。

事業目的を記載する際に注意すべき点が6つあります。多く感じるかもしれませんが、この注意事項を抑えておくとスムーズに事業目的を決定できるので、しっかりと確認することをおすすめします。

チェックアイコン許認可や届出が必要な業種を確認する

業種別に許認可や届出が必要な場合もあります。そのためには、許認可の内容に応じて定款に適合した事業目的を記載する必要があります。事業の内容だけでなく、その根拠となる法律名まで記載した細かい文言まで指定されているケースもありますので、しっかり確認をしておきましょう。

都道府県知事への登録が必要になります。事業目的に「旅行業者代理業」「旅行業法に基づく旅行業者代理業」のいずれかの記載が含まれていなければなりません。

近年では個人間での中古品の販売は盛んに行われていますが、それを法人として行うとなると、古物営業法に基づき公安委員会の許可を受けなければいけません。この場合の窓口は警察署の生活安全課になります。

許可を得るためには定款の事業目的に「古物営業法に基づく古物商」などと記載する必要があります。

その他、許可が必要な事業の例を以下に記載します。

例
・食品の製造、販売、飲食店の経営
・宅地建物取引業
・ガスや灯油の販売
・運送業
・介護事業
・宅地建物取引業
・産業廃棄物処理業

手続きの方法なども合わせてしっかり確認しておきましょう。

自分の業種はどうなのだろうと不安な方は手続きなども含めて、専門家を利用するのもおすすめです。

チェックアイコン将来的に行う可能性がある事業も記載しておく

基本的に定款に記載していない事業を行うことはできません。

そのため、会社設立当初はやる予定はなくとも、今後は行おうと思っている事業がある場合も定款に記載することを忘れないようにしましょう。

定款に記載する事業目的は記載数に上限はなく、また、書いたからといって必ずしも行わなければいけないといったこともありません。

もし、定款に記載されていない事業を行いたい場合には定款を変更する手続きをしなければいけません。追加で時間と登録のための費用もかかってくるため、事業拡大を視野に入れている場合には、事前に記載しておきましょう。

チェックアイコン事業目的を書きすぎない

上記で制限がないとお伝えしましたが、それならとにかく多く書いた方がメリットが多いの?と考える方もいるかもしれません。

ただ、会社設立当初にあまりにも多岐にわたる事業目的では融資を受ける場合などに実態が掴めない会社としてマイナスな印象をもたれかねません。さらに事業目的を細分化してしまうと、「定款が冗長になり、読みにくく第三者に不信感を与える」「事業目的を追加・変更するときの柔軟性が失われる」「実態と乖離した内容になる恐れがあり、口座開設や融資などに支障が出る可能性がある」といった問題が挙げられます。自社としても項目が多すぎると管理の手間や許認可の負担が増加する可能性もあります。

そうならないためにも、事業目的はメインの事業と今後5年程の範囲で行いたい事業目的に絞って記載するのをおすすめしています。

チェックアイコン事業目的に矛盾がないようにする

事業目的を複数記載する場合は、記載した事業内容に矛盾が称していないかを繰り返し確認しましょう。事業目的に矛盾が生じていると、経営に一貫性がなく、将来的な方向性が不明確になります。どの事業を重点的に進めていくべきかなどの明確な指針がないと、意思決定の遅れや対応の漏れが生じて、会社の停滞や法的トラブルの発生、さらには社外からの信用を失う恐れがあります。

どのような事業目的だと矛盾が生じているのか具体例を挙げて解説します。

事業目的に「医薬品の販売」と「風俗業の経営」を記載している場合、「医薬品の販売」には厳格な制限やルールがあり、許可や認証を得たうえで事業を行う必要があります。一方で「風俗業の経営」は地域によりますが、許可や認証は必要なく、社会的評価や法的な制限も異なります。この2つの事業を同じ企業が行うと、法的なトラブルや会社のイメージが損なわれてしまう恐れがあります。

上記のように矛盾した事業目的を記載すると、法的なリスクや社外の評価に関するリスク、その後の対応にかかるコストがかかるため、記載した事業目的に矛盾がないか専門家を交えて確認すると安心です。

チェックアイコン業界・業種による特別な規制などを確認する

特定の業種によっては、特別な規制が必要なケースもあるので、事業目的を設定する際に確認しましょう。例えば、経営を行う上でさまざまな規制が多い金融業や保険業、医療業界などは事業目的を決める前にそれぞれどのような文言を使用するのか確認する必要があります。許認可が必要な業種の場合、定められた文言を用いて正確に記載しなければなりません。もし誤った表現やあいまいな文言で記載されていると、法務局で書類が受理されずに作り直さなければなりません。

実際に事業目的として良い例と悪い例を規制法令を合わせて挙げるので、比較してみましょう。

業種 規制内容 良い例 悪い例
金融業 貸金業法
金融商品取引法
資金決済法
貸金業法に基づく貸金業 お金を貸す業務
第一種金融商品取引業 金融サービスの提供
資金決済法に基づく暗号資産交換業 暗号資産関連ビジネス
保険業 保険業法 損害保険代理業 保険商品の販売
生命保険の募集に関する業務 保険の仲介・紹介
医療業界 医療法
医師法
内科・外科などの診療所の運営 病院のような施設の運営
医療法に基づく病院の開設および運営 医療に関する事業
訪問看護ステーションの運営 健康サポート業

上記の「悪い例」のように「サービスの提供」や「紹介」といったあいまいな表現は厳禁です。規制されている法令に応じて適切な文言を選ぶことが重要です。

適切な言葉をつかえているのかという判断が難しく、「素人だけだと難しい」「手続きで頭を悩ませたくない…」と感じる方が多いと思うので、専門家へ依頼することも検討しましょう。

チェックアイコン最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」を入れる

一通りの事業目的を記載した後は最後に「前各号に付帯関連する一切の事業」という文言を記載してください。こうすることで会社の掲げた目的に関連性があれば、広範囲でカバーすることが可能です。将来の事業に幅を持たせるためにも入れておきましょう。

以上の注意すべき点を踏まえて、自分が会社として今後行いたい方向性に合わせて事業目的を記載していきましょうね!

事業目的の追加と変更

会社を設立した後に、事業目的を追加したり変更したりすることは可能です。追加・変更のどちらも手順や流れは同じなので、安心して手続きが行えます。

実際の流れについて分かりやすくまとめたので、必要な書類や費用を把握しておきましょう。

定款の変更手続き

事業目的を追加・変更するためには定款を変更しなければなりません。定款を変更するには株主総会の特別決議を開きます。事業内容の追加・変更は、会社の経営方針に深くかかわるため、株主への説明を行い、同意を得る必要があります。株主からの同意を得て会社として方針の一貫性を保つことがとても大切です。

特別決議は普通決議よりも要件が厳しく定められており、議決権を持つ過半数の株主が出席して、出席した3分の2以上の賛成によって可決されます。株主の方にも同意していただけるように、事業内容の変更についての妥当性や明確性をはっきりと提示して説明できるように準備を行いましょう。

変更登記申請書を提出する

特別議会で可決された後は、変更登記申請書を管轄の法務局へ提出します。提出する期限があり、変更してから2週間以内に登記申請をしなければならないので注意しましょう。

また、申請書のほかに、株主総会議事録や議決権を行使した株主リスト、変更後の定款のコピーなどの添付書類が必要で、登録免許税も3万円程度の手数料と手間がかかります。変更から提出するまでの期限が決められているうえ、登記の変更申請から登記完了するまで1週間から1か月程度かかるため、スムーズに手続きが行えるようスケジュールは事前に整理しておきましょう。

許認可の確認

新しい事業を始める場合は、許認可の有無や変更登記前に許可が得られているのか確認しておくことが重要です。事前に許可を取得していないと、事業内容を変更したからといって実際に事業に取り掛かれない恐れがあります。

そのため、新しい事業を追加する際は、各種許認可の有無や手続きの流れ、必要な資格について把握しておきましょう。

事業目的に記載のない事業を行った場合

「事業内容に記載していないが、実際には行ってしまった事業がある」と不安に感じる方が一定数いるのではないでしょうか?

結論からお伝えすると、定款に記載していない事業を行っていても罰金や懲役などの刑罰が科せられることはありません。ただし、刑罰がないからといって記載のない事業を行うことは、さまざまなリスクを冒すことになるのであらかじめ認識しておくことが重要です。

記載のない事業を行うことで以下のようなリスクや影響があることが予測できます。

→定款に記載のない事業は「目的の範囲外」とされ、責任範囲や契約の有効性に影響を及ぼす可能性があります。

→記載のない事業を行ったことが知られると、取引先や金融機関からの信用を失い、今後の契約や融資などに影響を及ぼす可能性があります。

→目的外の事業によって、株主が損害を被った場合は取締役への責任が追及され、損害賠償を請求される恐れがあります。

上記のようなリスクがあるため、事業を新しく始める場合や変更する場合は正式な手続きを行い、適切な事業運営を行いましょう。

定款作成もお任せください

今回は、会社設立時に必要となる定款の中の「事業目的」についてご紹介しました。

事前にしっかり記載しておくことで今後の融資の審査もスムーズになりやすくなります。

とはいえ、自分の事業や今後の事業構想は人それぞれ違います。自分で作成してみるのも良いですが、不安な方は知識の豊富な専門家の意見を一度聞いて決めるのも良いかもしれません。

当事務所は、定款の作成など、会社設立に関する支援に幅広く対応しております。また、会社にとって重要な税金に関する手続きの代行や会社設立に伴う助成金や補助金の無料診断サービスも行っております。「面倒」「難しい」という方はぜひお気軽にご相談ください。お待ちしております!

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投稿日: 2023年1月30日   10:22 am

更新日: 2025年7月15日   10:51 am

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