
事業主の皆様、「社会保険」について理解していますか?
会社設立時には様々な手続きが必要となりますが、その一つとして社会保険の加入が必須になっています。未加入のまま企業の経営を続けていれば法に基づく罰則を受けることになります…….。
これから自分でビジネスを始めるならば、避けては通れない社会保険!
当事務所では、神奈川県横浜市を中心に『税理士業務』と『社会保険労務士業務』の両方をご提供していることもあり、これまでに”雇用”や”労働”に関するさまざまなご相談をお受けしてきました。
そこで、今回の記事では、社会保険の加入条件や手続きの流れについてまとめていきます!事前に知っておき、いざという時にはスムーズに手続きを行うようにしましょう。
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Contents
社会保険について知ろう
社会保険とは、公的な費用負担によって、被保険者や被扶養者が病気や高齢、介護、失業、労働災害などのリスクに備えるための制度で下記の5つの保険の総称です。

・厚生年金保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険
健康保険
業務外で病気やケガなどをした時や傷病中の生活に必要な給付を受けることができる保険制度です。健康保険の中には、全国健康保険協会(協会けんぽ)と各健康保険組合(健保組合)の2種類があります。保険料は会社と従業員が折半して支払います。健康保険は従業員だけでなく、従業員の被扶養者も保険給付の対象となります。
≪主な給付内容≫
療養費、高額療養費、傷病手当金、出産手当金、出産一時金、埋葬料など
厚生年金保険
企業に勤める労働者を対象にした公的年金制度です。加入している本人やその家族は、老齢や障害、死亡などにより年金給付や一時給付金が支払われます。年金制度では、被保険者が3種類に分けられており、20歳以上60歳未満の自営業者や学生、無職の方などは第1号被保険者、70歳未満の会社員や公務員は第2号被保険者、厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者は第3被保険者となります。
第2号被保険者は、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を受け取ることになります。保険料は健康保険同様、会社と従業員が折半して支払います。
≪主な給付内容≫
老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)、遺族年金(遺族厚生年金)、障害年金など
介護保険
要介護認定または要支援認定を受けたときに介護サービスを受けることが出来る保険制度です。加入時期は、40歳になった月(40歳の誕生日の前日のある日)からになります。65歳以上の方は、要介護と認定された場合にいつでもサービスを利用できます。40歳以上64歳までの人は、基本的に介護の必要性がないと判断されるため、サービスを利用することはできません。ただし、介護保険の特定16疾病に罹患し、介護が必要と認定された場合はサービスを利用できます。
会社員の場合は、40歳になった月から健康保険に介護保険料が上乗せされて徴収されるのが通常となります。
≪主なサービス内容≫
居宅介護支援、訪問介護、通所介護、施設介護、福祉用具貸与など
雇用保険
従業員が失業した場合などに金銭面をサポートを行い、労働者の生活の安定や就業促進を目的とした保険制度です。失業中に給付される「基本手当(失業手当)」や一定の教育訓練受講した際に費用の一部がカバーされる「教育訓練給付金」などがあります。このほかにも、介護や育児によって仕事を休むときにも、雇用を維持するための費用として雇用保険から支払われます。
≪主な給付内容≫
基本手当(失業手当)、育児介護休業給付、高年齢雇用継続給付、教育訓練給付金など
労災保険
労働者災害補償保険法に基づき、民間企業の従業員とその遺族に適用される公的保険制度です。仕事中だけでなく、通勤途中のけがや障害、死亡についても給付が行われます。ほかの保険とは異なり、労災保険料は、会社(事業主)が全額負担になります。
≪主な給付内容≫
療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、傷病補償年金、介護保障給付、遺族補償給付、葬祭料・葬祭給付
狭義の意味での社会保険
中でも健康保険と厚生年金保険の2つを狭義の意味での社会保険とも呼ばれ、今回はこの2つに絞ってそれぞれ解説していきます。
会社設立時|社会保険の加入は必須
まず、会社を設立したら、法律によって社会保険に加入することが義務付けられています。これは従業員の有無に関わらず、たとえ一人の場合でも一定以上の報酬がある場合は該当します。もっと詳しく見ていきましょう。
社会保険加入の条件
☆国、地方公共団体または法人の事務所
☆一定の業種(製造業、土木建設業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋行、集金案内広告業、教育研究調査業、医療保険業、通信報道業など)であり、常に5人以上を雇用する個人事務所
なお、上記に該当しない事務所であっても、従業員の半数以上が厚生年金保険等が適用されることに同意して、事業主が申請して認可をうけた場合は任意適用事務所として働いている人全員が社会保険に加入することになります。
万が一、社会保険に入っておらず、それが発覚した場合、最悪のケースでは過去2年にさかのぼって保険料を徴収されたり、罰則を受けたりする可能性があります。具体的には、以下のような罰則が定められています。
6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金
社会保険の対象となる従業員
2020年5月より社会保険の適用拡大が示された法律が成立しました。これによりパートやアルバイトなど短時間労働者も、社会保険の被保険者ということになりました。
また、2024年10月には社会保険の加入条件が引き下げられ、「従業員数が101人以上の企業」から「従業員数が51人以上の企業」に変更されました。そのため、正社員だけでなく、一定の条件を満たしたパートやアルバイトなどの短時間労働者も社会保険の加入が義務となりました。社会保険が適用となる対象者の一覧は以下の通りです。
社会保険適用対象者の一覧
2016年10月~ |
2022年10月〜 |
2024年10月〜 |
週20時間以上 |
週20時間以上 |
週20時間以上 |
月額賃金8.8万円以上 |
月額賃金8.8万円以上 |
月額賃金8.8万円以上 |
雇用期間1年以上が見込まれる |
雇用期間2カ月超が見込まれる |
雇用期間2カ月超が見込まれる |
学生は適用除外 |
学生は適用除外 |
学生は適用除外 |
従業員数501人以上の企業 |
従業員数101人以上の企業 |
従業員数51人以上の企業 |
自社が加入していない場合と同様に、加入対象者の従業員がもし未加入のまま放置されていても最悪の場合、懲役または罰金などの罰則が科せられます。自社に加入対象となる従業員がいないかどうか、いる場合はしっかり加入しているか経営者としてこまめに確認しておきましょう。
実際に社会保険加入する場合
会社を設立したばかりの方などは、社会保険の加入が必要になった際の流れを理解できていないのではないでしょうか。
社会保険の種類が理解できたところで、社会保険に加入する際の流れや必要書類について解説していくので、把握しておきましょう。
社会保険加入の流れ
では、続いて社会保険加入の流れを事業者と被保険者に分けて説明していきます。
<事業者の社会保険の手続き>
- 社会保険への加入義務の事実が発生してから(法人であれば会社設立から)5日以内に、事務所の所在地を管轄する年金事務所にいく
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届、被保険者資格取得届、被扶養者届、保険料口座振替納付申出書(被保険者に扶養家族がいる場合)を日本年金機構へ提出(送付)する
これらの書類は年金事務所で受け取るか、日本年金機構のサイトからダウンロードすることも可能です。また、書類の提出に関しては、オンラインの電子申請で手続きを行うことも可能なので、「年金事務所や日本年金機構へ出向くのが難しい…」という方はぜひ活用してください。
<被保険者の社会保険手続き>
被保険者は、被保険者になった日から5日以内に手続きを行う必要があります。この手続きは被保険者ではなく、雇用主である企業が行います。被保険者は事業者へ基礎年金番号通知書(年金手帳)またはマイナンバーカードを提出します。(マイナンバーカードは提示のみ)
所属している企業から年金事務所へ「被保険者資格取得届」を提出して、社会保険への加入手続きを行い、給与から社会保険料が天引きされます。
必要書類について
次に、加入手続きの際の必要書類についてさらに詳しくお伝えします。
<事業者の必要書類一覧>
社会保険に初めて加入する際に提出する書類でこのほかにも提出日の90日以内に発行された会社の登記簿謄本の原本(法務局で取得可能)の添付が必要となります。また、もし会社の場所が登記した場所と異なる場合には会社の賃貸借契約書のコピーや公共料金の領収書など会社の所在地がどこか確認できる書類も必要になります)
健康保険、厚生年金保険被保険者資格取得届は、役員だけでなく従業員も全員分提出する必要があります。基本的には添付書類は不要ですが、60歳以上の方が退職後1日の間もなく再雇用された場合や国民健康保険組合に引き続き加入し、一定の要件に該当する場合などは別途該当する添付書類が必要となりますので注意してください。
役員や従業員に扶養家族(配偶者や子供、父母など)がいる場合に提出してください。
続柄を証明するために戸籍謄本または住民票(提出日から90日以内に発行されたもの)の添付が必要になります。また、場合によっては届出書に被保険者と扶養される方のマイナンバーが記載されている場合は住民票などの添付は不要であったり、その他でも所得要件を確認する書類の添付が必要な場合があります。
・健康保険、厚生年金保険料口座振替納付申出書
健康保険や厚生年金保険料を口座振替で支払いたい場合は口座振替納付申出書の提出が必要です。毎月納付書で支払うのは手間になったり、支払いを忘れる可能性があるので、口座振替で支払う企業のほうが多いです。
納付申出書に必要事項を記入して、口座振替を利用する金融機関の確認を受けます。その後、事業所を管轄している事務センターもしくは年金事務所へ郵送、または年金事務所の窓口へ提出します。口座振替納付申出書は、管轄の年金事務所か日本年金機構のホームページ、金融機関で入手することができます。
詳しくは日本年金機構のホームページでも確認することができますので、こちらも事前にしっかりと確認しておきましょう!
上記で紹介してきたように会社の役員や従業員の要件によって添付しなければならない書類の有無や種類が異なってきますので、不安な場合は一度専門家に相談されるのをおススメします。
手続きをする時期と提出方法
社会保険の加入手続きは、会社を設立してから(被保険者になってから)5日以内に行います。期限を過ぎた場合でも、日付をさかのぼって加入手続きをすることはできますが、社会保険の加入対象である証明が必要になります。証明できる書類として登記簿謄本などがありますが、登記簿謄本を取得してから手続きとなると、工数が増えてしまうため、期限内に手続きを行いましょう。
また、加入手続き時の提出方法は、郵送、窓口、電子申請の3通りがあります。年金事務所が近くにある場合は窓口に持参しても問題ありませんが、直接書類を確認してもらえる反面、時期によっては窓口が混みあう可能性があるので、余裕をもって持参しましょう。郵送の場合は、書類に相違がないかを確認し、送付先や期限に注意が必要です。
電子申請においては、迅速に手間がなく手続きを行うことができます。それぞれの特徴を理解したうえで、自身に合った提出方法を選択しましょう。
さまざまなケースの手続き方法
従業員を採用して雇用することもあれば、退職するケースもあります。さまざまなケースに対応して社会保険の手続きを行う必要があるので、ケース別の手続き方法を解説します。
従業員を採用した際や被保険者の扶養家族に増減があった場合
自社で新しく従業員を採用した際には採用日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を日本年金機構へ提出する義務があります。提出方法は郵送、持参または電子申請などの方法があります。
扶養家族が増えた場合は、被扶養者(異動)届と続柄が確認できる書類(戸籍謄本や住民票の写し)や収入が確認できる書類(雇用保険受給資格者証・離職票)などが必要です。結婚をして扶養家族ができると婚姻届受理証明書、被保険者と別居している場合は、仕送りの金額を確認できる書類(現金書留の写し、預金通帳の写し)など忘れずに準備しましょう。
従業員が結婚した場合
結婚によって、氏名や住所が変わる場合は、社会保険の変更手続きが必要となり、「健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更(訂正)届」、「健康保険・厚生年金保険被保険者住所変更届」を速やかに日本年金機構へ提出しなければなりません。ただし、マイナンバーカードと基礎年金番号が紐づけられていると、氏名や住所の届出は原則不要になります。紐づいていない従業員や外国籍の従業員の場合は、従来の手続きを行います。
さらに配偶者が健康保険の被扶養者になると「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を日本年金機構に提出します。配偶者が国民年金第3号被保険者になる場合も同様の手続きが必要です。
従業員が退職する場合
従業員が退職した場合には、健康保険・厚生年金保険の「被保険者資格喪失届」を年金事務所に提出します。こちらも5日以内に年金事務所の窓口、郵送、インターネットのいずれかの方法で提出となります。従業員が退職した際には、社会保険の手続き以外にも雇用保険脱退の手続き、所得税・住民税関連の手続きも必要になってきます)
上記で説明した通り、社会保険の手続きには期限があるため、前もって計画的に準備を進めていくことが非常に重要となります。決められた期間に漏れの無いように書類を作成し、提出しましょう。
60歳以上になってすぐ再雇用になった場合
会社によっては、60歳で定年を迎えたとしても再雇用を行うケースがあります。60歳以上になって退職後すぐに再雇用された場合は、所定の手続きが必要になるので注意が必要です。
60歳になって、一度は雇用関係がなくなったため、資格喪失届と再雇用に関する書類を準備します。必要な書類は、退職日が確認できる就業規則・退職辞令の写しや再雇用を証明するための雇用契約書の写し、事業所の証明書を準備して手続きを行います。再雇用を行う際は、改めて再雇用の手続きが必要になるので、忘れないようにしましょう。
社会保険手続きの注意点
社会保険手続きを行うには、専門的な知識が必要になる場合があるので、社内の担当者が行う際には注意が必要です。
社会保険や手続きについて注意すべき点を詳しく解説するので、事前に確認しておきましょう。
社会保険に加入しないとペナルティが課せられる
会社設立時には、健康保険と厚生年金保険の加入が義務付けられています。仮に加入手続きを行わなかった場合、年金事務所から加入要請が届きます。手続きを忘れて加入要請が届いてしまった場合は、早急に手続きを行いましょう。
加入要請に応じないと、立入検査の警告文が届き、警告文を無視し続けると法律にしたがって懲役や罰金といった刑罰が科せられます。社会保険に加入していないと、雇用調整助成金や産業雇用安定助成金といった助成金を受給できないので、会社設立段階で加入手続きを行うようにしましょう。
退職日と資格喪失日の違い
社会保険の手続きを行う前に理解しておきたいのが、社会保険の資格取得した日と資格喪失日の違いです。従業員を雇用する際の資格取得日は、従業員を採用した日となります。
しかし、資格喪失日は退職日の翌日となります。退職日が3月31日の場合、資格喪失日は4月1日になります。退職日と同日と認識してしまわないように注意しましょう。
社会保険の加入対象者の保険加入漏れ
パートやアルバイトといった雇用形態の場合は、社会保険の加入対象者かどうか判断することが重要です。社会保険の対象範囲が拡大したため、今までは未加入だった従業員も加入対象者であるケースがあります。
社会保険の手続きが60日以上遅延してしまうと、従業員が勤務していることを証明する賃金台帳や出勤簿の写しを提出しなければなりません。さらに、手続きが6か月以上遅延すると、手続きが遅延した理由を記載した「遅延理由書」の提出が必要になります。
手続きを忘れてしまうと通常手続きよりも工数が増えてしまうので、従業員の労働条件などを把握して、社会保険の加入漏れがないようにしましょう。
月額変更届を忘れる
被保険者の昇給や減給に伴って固定賃金が変動したタイミングで、標準報酬月額の月額変更届を提出しなければなりません。月額変更届を提出すると、保険料が改定されます。
月額変更届によって、標準報酬月額が変更されるタイミングは、固定賃金変動後の最初の給与が支払われた月から起算して4か月目です。月額変更届の提出が遅い場合は、速やかな標準報酬月額の変更を行えないので、変更が必要なときは速やかに手続きを行いましょう。
また、随時改定では社会保険料の変更がいつから適用になるのか、しっかり確認することが重要です。社会保険料が変更されると給与への反映が必要になるので、どのタイミングで変更されるのか確認します。
社会保険の手続きが不要なケース
社会保険の加入手続きが不要なケースは、次のようなケースが挙げられます。

・農林水産業や飲食業、サービス業に属する事業者(任意適用事業所)
・短期間の雇用者
所定労働時間や所定労働日数が正社員の3/4未満のパート・アルバイトであり、従業員が50人以下の企業に勤めている場合は、社会保険に加入する必要はありません。
しかし、社会保険に加入していると出産手当金や傷病手当金の支給対象になるというメリットがあるため、加入対象者でない方でも加入したいという人もいるでしょう。従業員が50人以下の会社に勤務している場合でも、会社が「任意適用事業所」に該当するため、パートやアルバイトが希望すれば労使合意の上、社会保険に加入することができます。
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