個人事業主やフリーランスとして事業を行う場合、自宅を事務所として使用している方が多いのではないのでしょうか。
「同棲していて彼氏名義で借りているけど、家賃って経費計上できるの?」
生活している状況によって、契約名義が自分の名義ではない場合や家賃を折半している場合などがあります。今回は、そのような場合の家賃に関する経費計上について詳しく解説していきます。
これから個人事業主やフリーランスになりたいと考えている方や既に個人事業主として事業を行っており、同棲などを考えている方は是非参考にしてください。
関連記事:個人事業主が経費にできるものは?判断基準や法人との違いを解説
Contents
賃貸契約がパートナーの名義だった場合、家賃は経費計上できる?
結論として、賃貸契約がパートナー名義だった場合の家賃は経費計上をすることができます。
しかし、自宅兼事務所として利用している場合は、プライベートと事業が混在しているため、客観的に必要経費として区別ができる根拠や証拠が必要になります。
家賃の引き落としがパートナーの口座になっている場合は、引き落としされている通帳やスマートフォンの履歴(ネット銀行の場合)のコピーや、家賃をパートナーに払っているという証明書などの書類が必要なので、忘れずに準備を行いましょう。
個人事業主が家賃をパートナーに支払っているという証明は、パートナーの口座に振込を行う際は振込の明細書やスマートフォンの取引履歴が該当します。現金で直接渡している場合は、領収書や出金伝票などが必要です。
領収書や出金伝票などを発行する手間を考えると、振込を行って明細書を発行した方がミスが起こる心配がなく、保管がしやすいかもしれません。
経費計上を行う上で重要なこと
経費計上を行う上で必要なことは、「事業に関する支出であるか」「個人事業主自身が支払いをしているか」の2点です。
経費というものは、開業や独立する際にかかった費用や事業を行う上で必要な支出のことを指します。そのため、パートナーとの食費や服飾費、プライベートの交通費などに関しては経費として認められません。
経費として計上して確定申告を行う際には、経費として支払った領収書や利用明細書などの証明書が必要なので、証拠となる書類の管理は厳正に行いましょう。プライベートに関する支払いを経費として申告してしまうと、税務調査が行われ、脱税行為として罪に問われてしまうので、「このくらいなら平気でしょ」といった軽い気持ちで行わないようにしましょう。
また、経費計上をする上で、事業に関する支払いを個人事業主自身または従業員が行っていることが大切です。基本的には個人事業主自身の支出が経費として計上することができますが、従業員がいる場合は従業員が事業に関する支払いを立て替えた場合でも、経費として計上することができます。
その際には、領収書の宛名を従業員の名前ではなく、個人事業主の名前もしくは屋号と個人事業主の名前を記載してもらう必要があるので、忘れないようにしましょう。
経費計上の考え方は、「事業に関する支出であるか」「個人事業主自身が支払いをしているか」という2点になるので、これから個人事業主やフリーランスになろうと考えている方はしっかり覚えていてください。
自宅で仕事をする場合の家事按分
自宅で仕事を行う上で大切なのは、「家事按分」です。
「家事按分」とは、事業用とプライベート部分の割合を決めて、支出を決めた割合で按分することを指します。
同棲している自宅の一部を事務所として使用している場合は、使用している面積や使用時間から計算して経費として計上できる費用を割り出します。
関連記事:個人事業主が知っておくべき家賃の経費計上方法と按分割合の決め方
面積で按分した場合
部屋が複数あり、事業している部屋の面積が分かる場合は面積で按分した方が分かりやすく確定申告も行いやすいです。
面積で按分した場合の例は以下の通りです。
・家賃は100,000円/月
・自宅の面積は60㎡
・仕事用の部屋面積は15㎡
<計算>15÷60=0.25 25%が事業用に使用している面積の割合です。
そのため、100,000×25%=25,000円 となり、25,000円が経費として計上することができます。
時間で按分した場合
自宅がワンルームの場合や事業用の部屋を区別せずに色々な部屋で仕事をしている場合は、面積で経費の割合を計算することが難しいです。そのような場合は、仕事をしている時間の割合で按分することが合理的です。
時間で按分した場合の例は以下の通りです。
・家賃は100,000円/月
・1日の稼働時間は9時間、1か月のうち20日間仕事をしている
・1か月を30日とする
<計算>
9時間×20日間=180時間
1か月のうち稼働している合計時間は、180時間
1か月の合計時間
24時間×30日=720時間
そのため、事業で使用した割合
180時間÷720時間=0.25 25%
そのため、
100,000×25%=25,000円 となり、25,000円が経費として計上することができます。
面積と時間のどちらでも按分が難しい場合
事業用の部屋の面積や明確な時間を割り出すことができない場合は、適当な割合を出すということも考えられます。ただ、申告方法によっては、根拠のない割合で申告してしまうと、修正が必要になる場合があるので、注意が必要です。
青色申告を利用している方は、「必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に参入して差し支えない」と定められています。そのため、自分の感覚だけで「このくらいの割合で問題ないだろう」と申告するのではなく、先述した具体例のように明確な根拠に基づいた経費申請が必要になります。
一方で、白色申告は上記の条件に加えて、「業務・仕事の部分の割合がおおむね50%超の家事関連費だけが対象」という条件があります。白色申告は青色申告よりも家事按分の基準が高くなっており、家賃や光熱費、インターネット接続代などを業務で半分以上利用しているものしか経費計上ができないことになります。この条件になると家事按分できる方は多くいないため、申告方法を青色申告にした方が良いかもしれません。
家事按分が面積や時間で明確に出すことが難しい場合や申告方法を変更した方がよいか分からない方は、税理士などの専門家に1度相談してみましょう。
関連記事:青色申告で経費にできる項目は?勘定科目で認められる内容について
家賃や水道光熱費等を経費計上する際の勘定科目
家賃を経費計上するときの勘定科目は「地代家賃」となり、水道光熱費は「水道光熱費」として計上します。
また、計上する方法が2通りあります。「家賃を1か月単位で家事按分する方法」と「1年分の家賃をまとめて家事按分する方法」があり、それぞれの仕訳の特徴について詳しく説明します。
家賃を1か月単位で家事按分する方法
1か月単位で家事按分することによって、毎月記帳ができるため年間の所得の予測や毎月の財務状況の把握がしやすくなることが特徴です。
また、事業の繁忙期と閑散期がある場合や事業に費やす時間が月ごとで異なる場合など、月ごとに家事按分の割合が異なる方にはやりやすい方法になります。
実際の計算をしてみると以下の通りです。
・家賃は100,000円/月
・経費として計上できる金額は、25,000円
1か月25,000円のため、12か月分を計算する
25,000円×12ヶ月=300,000円
1年間を通して地代家賃として計上できるのは、300,000円となります。
1年分の家賃をまとめて家事按分する方法
1年分をまとめて家事按分することによって、毎月帳簿に記帳することがなく、経理の事務負担が軽減される点が特徴です。
実際の計算をしてみると以下の通りです。
・家賃は100,000円/月
・経費として計上できる金額は、25,000円
1年間を通して地代家賃として計上される金額
100,000円×12ヶ月=1,200,000円
事業用の割合は25%で、家事分の割合は75%
1,200,000円×0.75=900,000円
1,200,000円ー900,000円=300,000円
1年間を通して地代家賃として計上できるのは、300,000円となります。
計上できる金額の変化はないため、毎月帳簿で管理して年間の所得を予測しながら財務状況を管理していきたい場合は、「家賃を1か月単位で家事按分する方法」が合っているかもしれません。
一方で、年に1回で事務処理を済ませたいと考えている場合は「1年分の家賃をまとめて家事按分する方法」で運用した方がいいかもしれません。
業種によって適切な仕訳方法が異なるため、どちらが良いか分からない方は、税理士に相談して仕訳方法について決めましょう。
関連記事:個人事業主の確定申告は税理士に依頼しよう!費用相場とメリットを解説
経費計上する際の注意点
家賃に関して経費計上を行う際に注意してほしい点が2点あります。経費は常にお金が絡むため、税務署なども厳しく取り締まっているので、個人的な考えで行動をすることはやめましょう。
生計をともにする親族が賃貸契約をしている場合は、経費計上ができる
一緒に暮らしている人との関係性によって、経費計上の条件等が少し変わる場合があります。
「経費計上を行う上で重要なこと」で大切なことは「個人事業主自身が支払いをしているか」と記しましたが、生計を共にする配偶者やその他の親族、家族に関しては異なります。
仮に夫が家賃を支払っている場合は、「妻は必要経費として申告する金額を夫に支払わなければならない」と思うかもしれません。
しかし、関係性が生計をともにしている配偶者の場合は、夫が家賃を全額支払っており、妻の負担が全くない場合でも必要経費として申告することが可能です。
所得税法の第56条で生計をともにしている親族に対して給与などの対価を支払った場合は、経費として認めない旨と受け取った側の収入金額にしない旨が規定されています。一方で、親族が事業に関して支払いをした場合は、事業主の必要経費として計上できることになっていることが定められています。
そのため、生計をともにする方との関係性は経費計上を行う上で大切になります。経費計上によって節税効果が期待できるため、個人事業主の方は誰かと一緒に家を借りる際は、経費計上ができるのか確認してみましょう。
明細書等の証明書を紛失したら再発行する
家賃や光熱費の支払いをパートナーへ振込または現金で渡した際に、振込明細書や領収書を発行する必要がありますが、書類を紛失した場合は再発行を行いましょう。税務署に提出する証明書類に必要になり、厳しい罰則などはないかもしれませんが、回数を重ねてしまうと脱税を疑われてしまう可能性があります。
罰則を科せられるリスクを未然に防ぐために、証明書などの書類はできる限り再発行を行うように心がけましょう。
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税金について理解した上で経営しよう
今回の記事では、「パートナーが賃貸契約している場合の家賃は経費計上できるのか」ということについてポイントを紹介しましたが、少し複雑で難しかったかもしれません。しかし、経費計上ができるものを理解している場合と理解していない場合だと、理解している場合の方が節税効果の恩恵を受けることができるので、積極的に知識を身につけていきましょう。
もし、経費計上に関して不明な点があった場合や税務に関する手続きを外部に依頼したいと考えている場合は、税務に関するサポートを行っている当事務所へ是非ご相談ください。
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