経費計上を行う際に、領収書やレシートなど証明書類が必要です。
店舗で領収書を発行してもらう際に記載すべき項目が埋まっていないと経費として申告できない可能性があります。また、記載項目が埋まっていても、宛名や金額が相違している場合は、税務調査などで認められない恐れがあります。
独立したばかりの個人事業主の方やこれから起業する方は、領収書の正しい宛名の書き方や間違いがあった際の対処法やポイントを解説していくので、領収書の取り扱いについて理解しましょう。
Contents
経費で必要となる領収書
事業に関する消耗品などの購入費用や出張などの交通費は経費として計上することができます。事業に関係する支出であることを証明するために、領収書の発行が必要になるため、忘れずに購入店舗の従業員に伝えるようにしましょう。
領収書の記載すべき項目があるので、受け取った時にその項目が記載されているかしっかり確認しましょう。
・日付
・宛名
・金額
・但し書き(例:飲食代・消耗品費・書籍代等)
・発行者の名前
宛名のない領収書でも事業に関係する支出であれば、経費として認められますが、税務調査の場合は、領収書の記載項目がチェックされ、追及される場合があります。
税務上では、宛名や但し書きが空欄の場合は経費として認められないことが多いので、「経費として申請できたから大丈夫」と思わずに適切な対処をしましょう。
領収書に間違いがあった場合の対処法
領収書に何か間違いがあったときは、適切な対処を行う必要があります。間違いがあったからといって修正や記入を勝手に自分でしてしまうのは、税務上の問題になる可能性があるので、税理士に相談した上で対応しましょう。
間違っている個所によって対処方法が異なるので、詳しく解説していきます。是非参考にしてください。
日付が間違っていた場合
領収書を発行した日付が相違していた場合は、再発行を依頼しましょう。「日付くらいで再発行するのは面倒だな…」と思うかもしれませんが、金額によって大きな問題になってしまう可能性があります。
どうしても再発行ができないときは、発行者側は二重線と訂正印で訂正ができます。ただ、訂正してしまうと売上が多かった月に日付を修正して、納税額を減らすために故意で訂正を行ったとみなされてしまうかもしれません。
そのため、できる限り訂正ではなく、再発行で対処するようにした方が良いです。
金額が間違っていた場合
金額は、領収書の中でもとても重要な項目です。金額が1桁でも間違っていたり、コンマの位置が間違っていただけで、大きな損失を自社や取引先に与えてしまう可能性があります。
また、自社で発行した領収書に金額相違があった場合は、取引先からの信用が失われてしまうというリスクがあるので、特に金額に関しては複数回の確認が必須です。
金額は、訂正での対応が法律で認められていないため、領収書の再発行が基本です。限られた何らかの事情によって再発行ができない場合は、日付の時と同様に発行者側が二重線と訂正印で訂正を行います。トラブルを防ぐためにも、再発行することが最善の対処方法なので、できる限り対応してもらう・対応するようにしましょう。
また、金額を記載するときは、冒頭に「金」または「¥」を、末尾には「※(こめじるし)」や「ー(ハイフン)」「也」が必要になります。さらに3桁ごとに「,(コンマ)」を打つことは覚えておきましょう。
冒頭や末尾、3桁ごとに打つことで、金額を足したりすることができなくなるので、改ざんを防止する役割を果たしています。
宛名が間違っていた場合
領収書には必ず宛名の記載が必要です。宛名がないと誰が支払いをしたのかわからず、領収書が法的に有効な証明書類として受領してもらえない可能性があります。
宛名が相違していたときは、日付や金額同様に再発行してもらうことが望ましいです。
自社が発行元の場合は、宛名を訂正することは相手に失礼で不信感につながってしまうため、再発行で対処すべきでしょう。会話の中だけでは、完璧に聞き取ることができないため、お客様に書いていただいたり、名刺を確認させていただくなど、間違えないように事前の対応も必要です。
訂正する際の注意点
領収書の記載を間違えた場合、基本的に再発行の対応をしてもらいます。しかし、やむを得ず訂正で対応するしかない場面もあるかもしれません。
万が一の場合に備えて、訂正する際の注意点について覚えておきましょう。
修正ペンやテープを使用しない
領収書は経費を申請するうえで重要な書類になるため、公的書類と同様の扱いになります。そのため、修正ペンやテープの使用はできません。
摩擦熱で消えるボールペンは使用しない
手書きで領収書を作成している場合は、摩擦熱で消えるボールペンは使用しないように注意しましょう。消えるボールペンを使用することで、日付や金額など何かしらの改ざんが行われてしまう可能性があります。
日常的に使用する分には問題ないですが、領収書を発行するときには使用するペンにも注意が必要です。
訂正印はシャチハタではないものを使用する
訂正印に関しては、正しい決まりがあるわけではありませんが、シャチハタではなく印鑑を使用した方が無難です。
シャチハタはどこでも手に入れることができるため、領収書を受領した側で容易に訂正できてしまいます。そのため、受領側が勝手に訂正したと税務署から指摘される恐れもあります。
個人の名前で訂正する場合はシャチハタではなく、印鑑を使用した方が好ましいです。会社名や屋号があり、角印がある場合は、そちらを使用する方が、勝手に訂正などされる心配はなくなります。
宛名が空欄だった時に起りうるリスク
発行者側が誤って宛名を空欄のまま領収書を発行してしまう場面もあるかもしれません。宛名が空欄もしくは「上様」になっている場合も宛名がないと判断されるので、注意しましょう。
宛名が空欄の場合は、どのようなリスクがあるのか解説します。
第三者に悪用される可能性がある
宛名がないということは、「誰が支払いをしたか証明ができない」ということです。そのため、宛名のない領収書を紛失し、第三者の手にわたってしまったときは領収書を悪用される可能性があります。
たとえば、拾得した第三者が領収書に宛名を勝手に記入して経費を架空計上する危険性があります。宛名を記載することで、紛失したとしても第三者に悪用されるリスクは減らすことができます。
反面調査が行われる
宛名のない領収書を多く切っていると、税務署の「反面調査」が行われる恐れがあります。「反面調査」とは、税務調査の対象者本人ではなく、対象者の取引先などの関係者に対する調査のことです。
税務調査は、調査対象となる会社や事務所のパソコンや書類、帳簿や金融機関の通帳などから、申告した内容が合致しているのか確認します。
「反面調査」は事前の告知などは行わず、突然取引先や金融機関などへ調査を行います。文書や電話での問合わせを行ったり、実際に事務所などに訪問する場合もあります。
内容は税務調査と同様に、帳簿や請求書など書類の確認を行います。取引先だけでなく、領収書を発行した事業者にも税務調査が行われる可能性があることを覚えておきましょう。
発行者が「脱税ほう助」の罪に問われる可能性がある
宛名のない領収書が受領者側または第三者に悪用され、脱税が行われた場合は、発行した事業所が「脱税ほう助」の罪に問われる可能性があります。
空欄の場合は勝手に書き込むことができるため、支払者を偽って経費を申告することができ、実際に支払いをしていなくても証明書類がそろっていれば申告を行うことができてしまいます。そのため、脱税することができてしまうので、発行者側も脱税の手助けをしたと判断されてしまいます。
このようなリスクを防ぐためにも、宛名は空欄ではなく、支払者の正式名称を記載するようにしましょう。
宛名の正しい書き方
会社や個人事業主など取引先があると、領収書を発行する側になることがあるので、正しい書き方を身につけておきましょう。
法人の場合
会社の消耗品などを従業員が立て替えて支払いをしたとき、領収書の宛名は従業員個人の名前を申告すべきか、会社名を申告するのか迷う人も少なくありません。
考え方としては、購入したものやサービスがどこに帰属するのかという視点で宛名をどう申告すべきか判断しましょう。
従業員が立て替える場合は、購入した商品は会社に帰属するため、領収書の宛名は会社名にするのが一般的です。経費計上を行う際には、事業に関係する支出であるかが争点になるため、個人の名前を記載しても問題ありません。
しかし、税務調査が行われたときに従業員の個人名が記載されている領収書が多くあると、詳細な説明が求められる場合があるため、会社名に統一した方が管理しやすくなります。
個人事業主の場合
宛名が個人事業主の場合、書き方が2通りあります。
・屋号がない場合は、「個人名」のみ
「屋号」とは、個人事業主が事業を経営するにあたってつける名前を指します。屋号を持っている個人事業主は、事業用の支出だと分かりやすくするために、「屋号+個人名」を記載してもらいます。
「屋号」の有無を問わず、個人名の記載は必ず必要になるので、忘れないようにしましょう。
関連記事:個人のクレジットカードで経費立替は可能?仕訳方法や注意点を解説
インボイス制度における領収書の取り扱い
2023年10月から施行されているインボイス制度に則った領収書の取り扱いを理解していなければなりません。制度に則った領収書の記載項目は以下の通りです。
適格簡易請求書の記載項目 ・取引年月日・取引内容(軽減税率の対象品目である旨の記載) ・税率ごとに区分して合計した金額(税抜きまたは税込み) ・税率ごとに区分した消費税額等または適用税率 |
適格簡易請求書を発行できるのは、小売業や飲食業、旅行業などの不特定多数に向けて事業を営む事業者です。個人事業主の方で、不特定多数に向けて事業を行う場合は、適格請求書や適格簡易請求書を適切に発行できるシステムの導入を検討した方が、負担が軽減できるかもしれません。
関連記事:【2023年10月開始】インボイス制度とは?すべき対応を分かりやすく解説
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今回の記事では、領収書の宛名や金額が間違っていた場合の対処法や取り扱いについて紹介しました。初めて知る内容も多かったと思うので、少しずつ覚えていきましょう。
また、受領側でも発行する側でも領収書の取り扱いに迷ったときは、勝手に判断せずに税理士に相談しましょう。領収書に関する情報や知識について知ることができます。
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