クレジットカードを使用すると、毎月の支出を1枚の明細書で確認でき、会計ソフトとの連動で帳簿作成の手間も大幅に減らせます。ですが、まだ法人のクレジットカードを作成していない場合は経営者が自分のクレジットカードで経費立替を行う必要があります。
そこで、経営者個人のクレジットカードで経費立替するメリットと、経費を帳簿にどのように仕訳するか、また個人のクレジットカードで経費立替する場合の注意点について解説していきましょう。
Contents
クレジットカードで経費立替するメリット
まずは経営者の個人クレジットカードで経費立替するメリットについて紹介していきます。
経費立替や経理業務が楽になる
クレジットカードで経費立替を行うと、毎月のカード明細書で支出の詳細が一目で確認でき、いつ、どこで、いくら支出したかが簡単に分かります。また、会計ソフトとの連携により、領収書やレシートを見ながらの手作業が不要になり、経理業務が効率的になります。
またクレジットカードは資金繰りにも活用できます。会社が資金を調達する手段はいくつかありますが、即座に資金を得るのは難しい場合があります。その際にクレジットカードを利用すると、仕入れや支払いに1~2ヵ月の余裕が生まれ、その期間を活用して資金繰りを改善できます。
個人クレジットカードで経費立替するとポイントが貯まる
クレジットカードを使用すると毎回ポイントが付与され、利用額に応じて様々な特典が得られます。オフィスの賃料や光熱費、通信費などの月々の経費立替にクレジットカードを使用すると、ポイントをより効率的に貯めることができます。
事業活動では個人での支出よりも大きな金額が動くので、クレジットカードで経費立替をすると必然的に個人でポイントを貯めるよりも多くのポイントを貯めることができるため、金銭的なメリットが大きくなります。
法人向けのクレジットカードでの経費立替もできる
法人カードは企業や法人代表者向けのクレジットカードです。通常の個人向けクレジットカードと比べて利用限度額が高く、法人用口座から引き落とし可能なカードです。このカードはビジネスに特化した特典があり、社員用の追加カードも取得可能です。
法人カードを利用することで、経費を一括で処理でき、個人での経費立替が不要になります。
個人クレジットカードで経費立替した場合の仕訳
続いて、クレジットカードで経費立替した場合の仕訳方法について解説していきます。仕訳の方法については白色申告か青色申告かで異なります。また個人のクレジットカードか、法人のクレジットカードかでも方法が異なるため、今回は個人のクレジットカードで仕訳を行うケースについて紹介していきます。
白色申告の場合
クレジットカードを使って経費立替をする場合、購入した日と引き落とし日の間に1ヵ月から2ヵ月の遅れが生じるため、現金支払いとは異なる経理処理が必要です。しかし個人のクレジットカードで仕訳を行う場合は現金主義による単式簿記の方法で仕訳をしていきますので、支出の発生日だけで仕訳が完結します。
仕分けの際には以下のように支出が発生した日付と支出の内容、金額を記載します。
<日付> |
<収入> |
<支出> |
1月1日 |
(記載なし) |
光熱費:10,000円 |
青色申告の場合
青色申告で、個人用クレジットカードを使って支払いをした場合、帳簿上では「クレジットカードの所有者が、事業主から借りたお金で支払いを行った」という形になります。仕訳の際には適切な勘定科目を選んで記帳するだけで問題ありません。
<日付> |
<借方> |
<支出> |
1月1日 |
光熱費:10,000円 |
事業主借:10,000円 |
なお、クレジットカードの分割払いには、分割払手数料が発生します。分割払い手数料は経費精算の際に支払手数料の勘定科目で計上が可能です。
クレジットカードで経費立替した場合の注意点
経営者の個人クレジットカードで経費立替をした場合、プライベートで買い物をする場合とは異なり、いくつかの注意点があります。ここでその注意点について紹介していきましょう。
領収書の記載内容によっては収入印紙が必要になる
クレジットカードで経費立替をする場合、領収書に「クレジットカードでの支払い」が明記されている場合は、課税の対象にはならず収入印紙が必要ありません。ですが、領収書に「クレジットカードでの支払い」などが明示されていない場合、領収書上では現金で支払ったものと見なされ、支払金額が5万円以上の場合は、現金と同様に収入印紙を貼る必要がありますので、クレジットカードの領収書には慎重に目を通す必要があります。
クレジットカードの明細書は7年間保管しておく
クレジットカードを使用して経費を精算して確定申告を行った場合、明細書は7年間保存が必要です。税務調査の対象となる可能性があるため、7年分の書類が検査対象になります。
保存期間は発行日ではなく、確定申告の期限締め切りの翌日から7年間ですので、注意が必要です。保存が行われていない場合、青色申告が無効になり、課税額が増加するなどの厳しい罰則が科されることがあります。
紛失に備え、利用明細のデータと印刷した書類の両方を保存しておくと良いでしょう。
ポイントが多額になる場合は個人の確定申告にも注意が必要
商品の購入時に、クレジットカードなどで支払いを行うとクレジットカード会社のポイントが還元される場合があります。ポイントは付与される方法によって一時所得か雑所得に分類されます。
一時所得には最高限度額が50万円の「特別控除」が認められています。必要経費を差し引いた金額が50万円以下であれば申告は不要です。ただし、収入が50万円を超える場合は必ず申告しなければなりません。一時所得のうち、課税対象となるのはその半分です。
現状、ポイントの課税についてはグレーゾーンとなっており、ポイントを「値引き」と捉えるか「経済的利益」と捉えるかでも課税するかどうかで確定申告の可否が決まります。
課税のタイミングもポイントが獲得された時点ではなく、実際に使用する時点で課税されるべきだとするものと、ポイントが付与される瞬間から全てが課税対象となり、ポイントの使用の有無にかかわらず税金が発生すべきとの考え方があります。
税制上の具体的な規定が存在しないため、大量のポイントを獲得し、申告が必要かどうか疑問が生じる場合は、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
プライベートで使用すると経費精算が難しくなる
経営者個人のクレジットカードを使用する場合、仕事での支払いとの区別が重要です。仕事とプライベートで同じクレジットカードを使用していると、例えば家族旅行と出張の交通費の区別がつけられなくなるなど、どの費用が経費として支払われたのかを正確に把握するのが難しくなります。
一つのカードで仕事とプライベートの支払いをしている場合、適切なメモや保管方法がないと、利用明細からどの支払いが仕事関連なのかを判断することが難しいかもしれません。その結果、経費精算においてミスや不正が生じる可能性があります。経費精算の誤りを防ぐためには、クレジットカードを会社用とプライベート用で分けて使用することが望ましいです。
また、どのような支出が経費と認められるか、どこまでの範囲がプライベートで、どこまでの範囲が仕事の経費として立替可能かの判断が難しい場合には税理士などの専門家に相談しましょう。
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仕訳に関するお悩みはご相談ください
クレジットカードで経費立替すると経費の一括処理やポイントが貯まるなどのメリットが多いので、多くの経営者や法人が活用しています。
今回ご紹介したように、クレジットカードで経費立替をする場合には仕訳方法や注意点を意識して利用することが大切です。
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