経営者や企業の経理担当者であれば一度は聞いたことがある「減価償却」。
しかし、その内容をしっかりと理解している人は案外少ないのではないでしょうか。
減価償却って何?
会社経営において減価償却はどんなメリットがあるの?
本記事では、このような疑問を持つ方へ向け、減価償却についての解説をメリットや注意点なども交えてわかりやすくお伝えしていきます。
ぜひ今後の会社経営の参考にされてください!
Contents
減価償却って?正しい理解をしよう
減価償却とは、車や不動産などの固定資産を購入した際、費用をそのまま全額その年の費用とはせずに、資産の耐用年数に応じて配分し、その年ごとに計上していくという会計処理のことです。
通常、事業に必要な備品などを購入した場合、その年に経費として計上します。しかし、そのモノの価値が時間が経つにつれて減っていくような場合にはこの減価償却を行います。
事業に関係するものであればどんなものでも対象になるというわけではなく、対象となるものは耐用年数が1年以上、そして購入価格が10万円以上の固定資産となります。
例を挙げると、業務で使用する社用車、パソコン、その他備品などがイメージがつきやすいかと思います。ちなみに、一言で固定資産と言っても、社用車や建築物など形がある「有形固定資産」と、特許権やソフトウェアなど形のない「無形固定資産」があります。
さらに詳しくお伝えすると、減価償却できる主な固定資産はそれぞれ下記、一覧になります。
有形固定資産:建築物、パソコン、プリンター、車両など。
無形固定資産:ソフトウェア、特許権、商標権など。
反対に、土地や骨董などの時間が経ったとしても価値が劣化しないようなモノに関しては減価償却することはできません。
減価償却の考え方!
前項でも述べたように、減価償却は購入した代金を一括で経費とするのではなく、一定の年数で分割して少しずつ計上することです。なぜそうしなければならないかというと、資産は時間が経つにつれて、その価値は減っていくという考え方に基づいています。
例えば、自動車を例に挙げると、300万円で購入した場合、自動車は使用していくうちに徐々に自動車の価値自体は減っていき最終的には価値がなくなります。今回の例で言うと、購入した年に300万円を経費にするのではなく、今年は60万、次の年は60万、その次に60万というようにこの300万円を少しずつ分配して経費にしていくのです。
では、なぜこのような減価償却の対応が必要なのでしょうか。
結論からお伝えすると、資産と収益の関係に矛盾を発生させないようにする為だと言えます。
こちらも例を挙げると、100万円の備品を購入して、年間40万円の利益が出た場合、購入した年にそのまま100万円を計上してしまうと、その翌年は何もないのに利益だけが40万円出たことになってしまいます。そのため備品を購入した費用を分割することで、40万円の利益を得るために例えば30万円の費用がかかっていると言ったことを会計的に示すことができるので、収益の発生に関しての違和感というものは無くなるのです。
減価償却の方法について
減価償却を行う際には、まずその固定資産自体が減価償却の対象となるのか確認することから始まります。自分の感覚だけで判断してしまうと危険ですので、税理士など専門家に相談して確認をとっておく必要があります。
続いて、耐用年数はどれくらいかを確認します。耐用年数は固定資産ごとに法律で細かく定められておりますのでこちらも自分で決めると言ったことは絶対にないようにしましょう!
また、減価償却はそのモノの支払いが済んでいるかの有無に関わらず、事業のために使った時から始めるというのがルールとしてあります。
その減価償却の計算方法について2つご紹介していきたいと思います。
定額法
一つ目は定額法という計算方法です。定額法は固定資産の購入額を、法律できちんと定められた耐用年数で分割して、その年数の間は毎年一定の金額を経費として計上するという方法です。
定率法
一方定率法は、固定資産の購入額のうち、まだ計上していない残高に対して、耐用年数に応じて定められた一定の割合をかけて計算するという方法です。掛ける割合自体は同じなので、減価償却費としては1年目がもっとも大きくなり、年々少なくなっていきます。
上記の2つの方法のうち、どちらを選択するのかは基本的にはその会社によって様々です。ただ、一般的には建物や建物付属設備、構築物などは定額法、それ以外は定率法が選択されます。なお、特許権などの無形固定資産については定額法のみとなるので注意しておきましょう。
また、減価償却の仕訳としては「直接法」と「間接法」があります。
直接法は、固定資産から減価償却費を直接的に減らしていく方法のことで、反対に間接法は別途で「減価償却累計額」という勘定項目を設けるという方法となります。
これら2つの主な違いとしては、間接法であると元の固定資産の額が残っているように表示されるという点にあります。決算書の表示としては、間接法を選択するのが一般的と言えるでしょう。ただし、簿記にそこまで詳しくない個人事業主や経営者本人のみで会社を経営している場合には直接法の方が決算の情報を把握しやすいといった特徴があります。
減価償却で得られる5つのメリット
続いて減価償却を行うメリットについてご紹介していきます。
①節税につながる
1つ目のメリットは、会社としての節税につながるという点です。なぜなら、毎年、減価償却費として計上することによって、利益を抑えることが可能だからです。
会社で支払うべき税金として代表的なものが「法人税」ですが、この法人税は利益に対して課せられます。40万円の利益が出たとして、仮に減価償却費が20万円だとすると、法人税は40万円から20万円を差し引いた残りの20万円に課せられることになります。もし、減価償却費がないと40万円にそのまま課税されることになり、支払うべき税金の額に大きく差が出ることは一目瞭然ですね。
②損益を把握することができる
2つ目のメリットとしては、得られた利益に対してどのような費用がかかったのか損益を把握することができるという点です。ここまでもお伝えしてきましたが、何もしていないのにも関わらず利益だけが出るという状況はあまり考えられません。分割して少しずつ計上することで、その年々で得られた収益に対してどのくらいの費用がかかっているのかを確認することが可能となるのです。
③資産自体は残る
減価償却費は会計上こそ経費として計上していますが、実際に現金での支出がある訳ではありません。減価償却費として損益計算書に記載された分の資金は、課税されることのない資産として会社に残ることになり、会社としても大きなメリットです。とは言っても会社の会計処理はその他にも多くの手続きが混ざっているため、実際に会社に確実にその分の金額が残っているかといえばそういう訳でもありませんが…….。あくまで、現金の支出がない費用を計上できる仕組みがあるという点を頭に入れておきましょう。
④財務負担を減らすことができる
一括償却資産によって財務負担を減らせるという点もメリットとして言えるでしょう。一括償却資産とは10万円以上、20万円未満の資産のことで取得金額の3分の1ずつを3年間にわたって計上できる方法のことです。通常の減価償却では資産の購入月から決算期までを月割した額で計上しますが、この一括償却資産ではいつ購入したとしても3分の1の額を計上することができるのです。
また、一括償却資産は通常の減価償却費とは別で費用計上できるので、年間を通しての減価償却費用を増やすことが可能となり、結果として節税にもつながります。
⑤財務状況が良く見える
減価償却をすることによって財務の状況が良く見えます。理由としては、今までも述べてきたように減価償却は資産の購入価格を一度に計上するのではなくて、分割して少しずつ計上していく仕組みとなります。そのため、利益自体が一度に大きく減るということがなく、事業の運営自体が安定して行われているように見えるのです。
将来的に銀行からの融資を検討している人も多いかと思いますが、実際に銀行側が融資審査をする際にこの減価償却費が返済する能力を調べるための指標の一つにもなっている程です。うまく活用していきたいですね!
減価償却において注意すべきこと
会社を経営する上では最大限にこの減価償却を活用していきたいところですが、ルールが煩雑であることから、認識の相互というものも起きやすく、場合によっては税務調査で指摘されてしまうといったケースも少なくはありません。
そこで、注意すべき点もしっかり頭に入れておきましょう。
①耐用年数について
減価償却を行う際の肝とも言えるのが耐用年数です。耐用年数は、資産を使用していくにあたって耐えうると予想される年数のことをいいます。固定資産ごとに一つずつ法律で耐用年数が定められています。
同じ備品の種類であったとしても、例えば金属製か否かなどによっても耐用年数は異なってくるのです。
事前にこの耐用年数に関しては国税庁の「耐用年数表」などから確認しておく必要があります。
②減価償却している途中段階での資産の処分について
減価償却について説明している中でよく質問が挙がる項目が、減価償却している最中にその固定資産を処分することになった場合どうなるのかということです。
もし、減価償却をしている段階で何らかの理由によって資産を処分してしまった場合には、それによって発生した損失を「固定資産除去損」として計上をしなければならなくなります。もし、万が一この除去処理を忘れてしまうと、すでに会社にはない固定資産に対して償却資産税がかかり続けてしまうため注意が必要です。
③現金の支出を伴わない
減価償却をする際の現金の流れに着目した場合、現金の支出は一番初めに購入した時のみです。実際に減価償却費として計上する際でも、現金の支出はありません。その分減価償却の分は会社に残るという考え方となります。
このようなことも念頭に置いてキャッシュフロー表を作成しておくようにしましょう。
減価償却の特例について
最後に減価償却の特例についてもご紹介しておきます。
資産の額が20万円、または30万円未満の場合は、それぞれに特例が設けられており、そちらを適用することが可能となります。
まず20万円未満の場合には、先程も述べたように一括償却資産として取得金額の3分の1ずつを3年間にわたって計上することができます。
また、今すでに会社を経営しているような方の中で、30万円未満の資産においては、2024年3月31日までの取得であれば、青色申告者の場合には一括で必要経費とすることも可能です。
こちらの少額減価償却資産の特例の要件としては青色申告者であることの他に、従業員数が500人以下であること、資本金が1億円以下であること、適用除外事業者に該当しないことなどがあります。その他にも細かく要件が定められておりますので、適用したい場合には、要件についてもしっかり確認しておくようにしましょう。
その年の利益が多いかどうかによってどの金額を計上するかを賢く選択していくことが必要となります。
減価償却をうまく活用していこう!
今回は、減価償却についてのメリットや注意すべき点をまとめました。
会社の運営には、備品や営業車などの必要な資産の購入は必須となります。まして会社を設立当初はこういった資産の購入も増えるでしょう。そのため、この減価償却というものは会社を設立した当初から始まります。
最低限、基本の知識として覚えておきましょう。ただ、良く分からないながらも闇雲に進めて、それが間違っていましたとなると後々とても大変です。このような不安がある方は、まず、専門家に一度相談してください!
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