
個人事業で始める人も多い「飲食店」。
元々飲食業界にいて独立する人もいれば、全く異なる業種から勉強をして店を開くといった人など経緯は様々です。
最近では特に未経験から飲食店を開業するといったケースも増えてきており、いわば「誰でも」自分のお店が持てる時代になってきたということです。
その時に疑問に思うのが「開業資金」としてはどのくらいの費用が必要になるのだろう?ということです。
行き当たりばったりで準備を進めても、資金が足りず開業できなかったり、開業したとしてもうまく軌道に乗るのが難しかったりと困難を極める可能性もあります。
今回は、これから飲食店の開業を検討している方々へ向けて、開業にかかる費用について、そして開業までの流れや資金の調達方法についてもご紹介していきます。
是非、参考にしてみて下さい。
実際の融資事例:【新規開業支援】ビーガンスコーン専門店“iro” 横浜市西区伊勢町にオープン!

Contents
飲食店は自己資金0円で開業できる?
自己資金0円で開業することは、現実的に考えて不可能です。可能なのは、飲食店のオーナーや出資者が別でいることを条件とした特殊な例だからです。
自己資金0円で開業するには、融資を受けなければなりません。しかし、自己資金が0円だと金融機関の審査が通るのはとても困難です。加えて、融資が下りたとしても実行までに時間がかかり、物件取得費は自身で支払わなければならない可能性が高いです。
物件取得費は、保証金や礼金、仲介手数料などをまとめて支払いが必要です。例えば、家賃が20万円の物件を借りるとしたら、最低でも200万円程度の資金が必要になります。そのため、自己資金が0円で飲食店を開業することは非常に難しいでしょう。開業を検討していて、自己資金の準備ができていない人は、今から少しずつ資金の準備をしましょう。
飲食店開業の相場は約1,000万円
自分の店を持つにあたって、当然気になるのは「費用」の部分かと思います。いくら素敵な商品があったとしてもそもそも開業できなければビジネスとして成り立ちません。
費用については特にしっかりと頭に入れておきましょう。
日本政策金融公庫が出している資料によると、飲食店の開業資金の平均額は883万円となっています。その内訳は内外装工事368万円、機械・什器・備品等186万円、運転資金169万円、テナント賃貸費用155万円、営業保証金・FC加盟金6万円となっています。これはあくまで平均ですので、店舗の規模や必要な備品、店舗にあたる物件条件などによって前後してきますので目安として考えておきましょう。
また、平均開業資金は883万円ですが、開業してから家賃など当面の運転資金や自身の生活費などを考えた場合の資金を加味すると1,000万円を超える資金が必要になってくるという場合が多いです。
参考元:日本政策金入公庫(PDF)
詳しく内容をみていきましょう。
物件取得費
飲食店として営業を行うためには、必ずテナントと契約する必要があり、その契約までにかかる初期の費用を「物件取得費」といいます。保証金、礼金、仲介手数料などがこちらにあたります。特に、初月は家賃以外の費用がかなりかかります。一般的に家賃の前払いとして、10~12か月程度の家賃が必要になるケースもあるので、まとまった金額を準備する必要があります。
加えて、飲食店として物件を借りる場合に発生する特殊な費用が、造作譲渡費用です。居抜き物件と呼ばれている賃貸物件だとこの造作譲渡費用がかかるケースが多いです。居抜きとは、以前の借主が使用していた設備や什器備品、家具などがついたままの物件のことです。主に飲食業や旅館業、工場などで使われる物件に多く、このような物件を借りる場合は、前の借主に対して、設備や什器備品などの譲渡代金を支払う必要があります。
造作譲渡費用に含まれるものは以下の通りです。
・壁や床などの内装
・厨房設備(冷蔵庫・コンロ・製氷機・シンクなど)
・空調設備
・ダクト設備
・テーブルやカウンター
・照明器具(シーリング・スポットライトなど)
上記のような設備や什器備品が備え付けてあると、初期費用はかさみますが、設備費用が節約できる場合が多いです。また、早く営業を始めたいという方にとっては、基盤となる設備がそろっている物件だと、1から揃える必要がないため、早めの営業開始が実現しやすくなります。そのため、開業資金があまり多くない方やスピーディーに営業開始したい方は、居抜き物件も検討してみてください。
店舗投資費
通常テナントを借りると、コンクリートや配管が剥き出しの状態からのスタートとなります。そのため、店内の内装や外装を整える必要があります。ここは業種によって金額も大きく異なってきますので自分の業種に合わせた費用が必要となります。また、水道管などの排水設備を引き入れる工事も必要になるので、水回りの設備費用は高額になる傾向があります。
店舗の意向によって、内装や外装をこだわる場合もありますが、最低でも50万円程度はかかると考えておいたほうが良いでしょう。飲食の業態によっては2,000万円程度かかる場合もあるので、事前に自身が検討している業態の店舗投資費のシミュレーションを専門家としておきましょう。最近ではこの店舗投資費の削減のために、前述した居抜き物件も需要があります。
費用を抑えるための対策として、開業時は中古の厨房機器をリース・中古販売で導入したり、看板・家具などの一部をDIYで対応したり、最低限の設備で運営して利益が出てから追加投資を行うといった方法があります。
運転資金
実際に開業した後に経営が軌道に乗るまでにかかる費用が運転資金です。一般的には開業してから軌道に乗るまでに半年以上かかるとも言われています。それまでに店を潰すことなく営業させなければなりません。そのことからこの運転資金の重要さがわかります。
運転資金は、毎月かかる固定費の最低3か月、できれば6か月以上の金額を準備しておいたほうが良いといわれています。運転資金には、家賃や水道光熱費、人件費、仕入れなどがあり、飲食店を経営するには継続してかかる費用となります。また、経営方針によっては、広告に力を入れるために、ホームページやパンフレットの作成費用がかかるケースもあるので、外部に作成依頼を検討している場合は、数カ所から見積もりを取って検討しておくと開店までスムーズです。
飲食店は開業してから軌道が乗るまで時間がかかることが多く、「最初の半年間はずっと赤字だった!」というケースも少なくありません。そのため、運転資金は開業してからの赤字をも補填できるくらいの金額を準備しておくと安心です。
生活費
店舗が軌道に乗るまでに半年以上かかるとお伝えしましたが、その間に家族ももちろんですが生活しなければいけません。店のことばかりに気を取られがちですが、この生活費の確保も事前にしておくことが非常に大切になります。
こちらも運転資金と同様に6か月分の生活費を準備しておきます。店舗の開業資金等と合わせて、自身の生活費の算出を事前に行い、資金計画を作成しておきましょう。
【一覧】資金調達方法3選!
上記で開業にあたっての平均資金をご紹介しました。店を持つと決めた時点で少しずつ開店資金を準備しておくことが重要となります。ただ、1,000万円という大きな額を全て自分でまかなうというのは並大抵のことではありません。
次に主なおすすめの資金調達方法についてご紹介していきます。
日本政策金融公庫からの融資
政府系の金融公庫である日本政策金融公庫は、飲食店の開業資金の一部を融資する制度を行っています。「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」など様々な種類の融資制度があります。
通常の金融機関よりも個人事業主が融資を受ける場合は、受けやすくなっているので、自分の条件にあった融資制度について確認しておくことが大切です。
関連記事:日本政策金融公庫の創業融資とは?利用時の必要書類を紹介
補助金や助成金の活用
融資を受ける以外で、補助金や助成金を活用することも資金調達の一つの方法です。各自治体によって適用となる条件や限度額が異なりますので、早めのうちに各自治体のホームページなどで要件について確認しておきましょう。
親族や友人からの援助
資金調達の3つ目の方法として、親族や友人から援助を受けるというのも挙げられます。金融機関とは異なり、審査がないため、借りやすいと言うメリットはあるでしょう。ただ、返済計画などはしっかり立てて双方が納得する形で借りることが大切です。また、多くの場合、親族や友人から高い金額を借りることは難しく、他の資金調達と併用することになるでしょう。
開業資金を抑えるためのポイント
開業に必要な資金や手続きの流れが理解できたところで、
「正直、資金を準備するのが難しい…」
「融資してもらっても、目安となる金額に届かない…」
と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
もちろん、まとまった資金が準備できることが理想ではありますが、準備できないと落ち込むのではなく、開業資金を抑えるポイントに目を向けましょう!
下記の6つのポイントを抑えれば開業資金も削減できるので、是非参考にしてください!

・資金の使い道の優先順位をつける
・居抜き物件を活用する
・中古品やアウトレット品を活用する
・リース契約を活用する
・店舗の改装を自身で行う
事業計画を見直す
開業資金を抑えるために、まずは事業計画の見直しが必要不可欠です。事業計画とは、会社の事業目標を達成するための具体的な行動指針やどのようにして利益を上げていくのかなどを示した計画書のことです。開業資金を計算して、想定よりも金額が高くなる場合は、事業計画を見直すことが、開業資金の改善につながる可能性が高いです。
また、事業計画書は資金調達を行う上でも重要な書類にあたるため、会社の事業目標や将来性、収益性を示すことができるように、具体的かつ簡潔にまとめる必要があります。事業計画の作成で分からない点などがあるときは、税理士などの専門家へ相談してみるのも1つの方法としておすすめです。
資金の使い道の優先順位をつける
費用を抑えるためには、開業資金の中で必要最低限必要な資金の優先順位をつけましょう。開業する際に必要な資金を一通り挙げて、その中から「ここは資金が絶対必要!」というポイントを順位付けしながら整理すると、自身が優先したい箇所が見えてきます。
経営方針によって、「集客目的で映えるような店にしたいから、内装・外装に力を入れて、設備資金は最小限に抑えたい」「立地には妥協せずに、小規模でも人通りが多いところに構えたい」という考えがあり、その考えに応じた使い方が重要です。
今すぐ必要ではない宣伝費用や店舗の改装費などは、利益を上げてからでも遅くはありません。「開業するために何を優先すべきか」という考え方を大切にしましょう。
居抜き物件を活用する
前述したように、居抜き物件を活用すると基盤となる設備がある状態で開業ができるケースが多いので、開業資金の削減に役立ちます。内装や設備、什器備品などが一切ないスケルトン物件と比較すると、半額以下で営業を始めることができます。
レストランやカフェ、居酒屋などの自身の業態に合わせた居抜き物件を利用できれば、店舗設備にかかる費用を削減できます。特に費用負担が大きくなりがちな水回りの配管・設備に関する工事がなければ、費用負担の大幅な軽減が見込まれます。
ただし、居酒屋やカフェなどの飲食店が入っていた居抜き物件は、とても人気があるのですぐに次の借り手がついてしまいます。そのため、事前に複数の不動産会社へ相談や問い合わせを行い、空きができ次第、すぐに内覧できるような状況を作っておくことが理想です。
中古品やアウトレット品を活用する
開業にあたって使用する備品は新品でなくても問題はありません。費用を抑えるためには、中古品やアウトレット品を探すのも1つの方法です。中古品でも新品同然のものがあるので、テーブルやいすなどのデザインがそろったものが欲しい時は、インテリアショップのアウトレット品を探してみることをおすすめします。
また、飲食店向けの中古の厨房機器を取り扱っているお店もあるので、新品と比較してどちらが良いか吟味することが可能です。厨房機器を新品でそろえようとすると、お店の規模にもよりますが、数百万円かかる可能性があるので、できる限り資金を最小限に抑えたいポイントです。
リース契約を活用する
リース契約を活用すれば、店舗の機材や設備を購入する必要がないため、資金の大幅削減が期待できます。リース契約とは、事業者が設備を購入せずに、リース会社が代わりに購入した機材を事業者に貸し出す契約です。事業者はリース会社に対して、毎月のリース料金を支払って、機材を利用できるという状態になります。
なお、契約によりますが、機材の保守点検・メンテナンスはリース会社が行ってくれるので、事業者の業務負担も軽減されるメリットがあります。そのほかにも、最新機材を使い続けることができる点やリース料金を経費として計上できる点などのメリットがあり、初期費用を抑えたい方にはもってこいです。
一方で、長期で支払いを行うので、購入するよりも割高になりやすくなったり、機材の所有権はリース会社にあったりするので、メリットばかりではありません。リース契約を活用する際には、高額な機材だけをリース契約するなどの方法をおすすめします。
店舗の改装を自身で行う
自分自身で店舗の改装を行うことで、開業資金を抑えることができます。業者に内装や外装についての工事を依頼すると費用が高くなってしまいますが、自分で改装を行えば工賃などを省けるので費用を抑えられます。
ホームセンターなどに壁紙やペンキがあるので、店舗のコンセプトに合わせて天井や壁などを自分の手で塗ることも可能です。また最近では、SNSなどでもDIY動画を載せている人が多く、中には本格的な家具などを作っている方もいるので、動画を見て学びながら自分自身のお店を作るのもいいのではないでしょうか?
飲食店開業までの流れを知ろう!
続いて、実際に飲食店開業までの流れについてご紹介していきます。
①事業計画を立てる
飲食店を開業する際、まずは事業計画を立てることになります。どんな商品を取り扱うのか、店のコンセプト、場所、規模などを決めていきます。これは今後、店を経営していくにあたっての軸となる部分です。ここをおろそかにするのではなく、しっかり調査して考えていきましょう。
②必要資金を確定させる
店の事業計画が決まったら、それに合わせて必要になってくる資金を確定させます。それによって今後いくら準備する必要があるのかが明確になり、今後の動きも変わってきます。融資を受ける場合には書類の作成や審査の期間も必要になるので早めに動いていくことが大切です。
③資金を調達する
続いて、実際に資金調達をしていきます。上記でもご紹介した方法なども検討してみてください。補助金や助成金の制度は自治体によって最新の情報を確認する必要がありますので、こまめにチェックしておくことが重要となります。
④物件を探す
資金の調達まで完了したら、続いて店舗となる物件を探すことになります。店のターゲットとなる客層を集めるにはどんな場所が良いか、周りの競合店の状況なども踏まえ実際に自分で現地に足を運んで目で見てみることも大切です。
⑤資格を取得する
飲食店を開業するためには、「食品衛生責任者」と「防火管理者」の2つの資格や免許が必要となります。食品衛生管理者は食品衛生法に基づいて全ての飲食店に必須のものです。各都道府県にある食品衛生協会の講習会で取得が可能です。防火管理者は、従業員含め30名以上の収容人数の飲食店を開業する場合に必要となる資格です。物件の広さにもよって変わってくるため事前にしっかり確認しておきましょう。
また、業種によってはその他にも開業前に取得しておいた方が良い資格もありますのでこちらも合わせて確認しておくようにしましょう。
以上が大まかな流れとなります。
その他にも店舗の内装や外装を考えたり、備品の調達、従業員集めなど合間ですべきことはたくさんあります。スムーズに開業まで行うためにも、まずはそもそもの資金調達ができるかが肝心ですね。
夢の開業をサポートします
今回は飲食店の開業にあたっての必要資金やポイントをまとめました。飲食業界で生きていこうと思った時、自分の店を持つということは誰しもが持つ夢ですよね。それを夢で終わらせないためにも資金計画はしっかりと立てて進めていくことが重要です。
当事務所では、開業に関しての融資サポートも行っております。今後、飲食店を開業しようとお考えの方、漠然としているという方でもまずは一度お気軽にご相談ください!

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